近視等の屈折異常と弱視の違い

弱視とは、文字通り視力の弱い状態です。視力の弱い状態というと、近視や老眼を想像される方もいるでしょう。ご自身が近視だったり、あるいは老眼が始まっている方は、自分の見えにくさから弱視児の見え方を推測しがちです。

しかし、弱視児の見え方と近視や老眼の見え方は全く違うと言ってもいいでしょう。

たとえば、普通の近視の児童は、眼鏡を掛けなくて(裸眼で)0.02という非常に低い視力でも適切な眼鏡をかければ日常生活に支障のない視力まで得ることができます。しかし、弱視児の場合は、裸眼で0.07くらいの児童が適切な眼鏡をかけても0.1しか出ないなど、ほとんど視力の変化がない場合が多いのです。また、白内障や緑内障などに大人がなった場合、適切な治療を受ければもとの視力に戻る場合が多いのですが、弱視児の場合は、適切な治療をしても十分な視力が出ません。

 それは、近視や白内障・緑内障といった異常の他に、フィルムにあたる網膜や、網膜で捉えた情報を脳へ伝達する視神経にも何らかの異常があるためです。眼鏡は、近視や遠視などによってずれているピントを矯正することしかできないのですが、網膜や視神経に異常があると、いくらピントがあっても、それを正確に捉えることができないのです。

   また、眼鏡やコンタクトレンズを使っていない弱視児がいますが、これは近視や遠視などの屈折異常がなくて、網膜や視神経などの眼疾だけの児童だからです。

人間の網膜や視神経のはたらきは、6歳くらいまでに決まると言われています。それまでの間に、十分な刺激を与えておかないと、いくら網膜にきちんとピントを合わせても、適切に処理することができません。弱視児の場合は、網膜や視神経などの異常のある場合はもちろんですが、網膜や視神経の病気でなくても、先天的に何らかの眼疾があって小さいうちに網膜や視神経に十分な刺激を与えることができていません。また、ある程度の年令になってから弱視になる人がいますが、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、視神経萎縮などほとんどが網膜や視神経の病気です。

 先ほども書きましたが、網膜や視神経は、カメラのフィルムの役目をしていますが、それだけでなく、カメラで言う自動露出(入ってくる光の量を感じてその量を調節する)やオートフォーカス(ピント合わせ)の機能のセンサーの役目をしています。そのために、普通の近視や遠視の子供たちとは違った見え方や見るときの不都合が起こります。

これらの不都合や見えにくさは、眼疾の種類や程度、育ってきた環境や経験してきた内容によって、一人ひとり違ってきます。

この不都合や見えにくさの課題の多くは、見方の工夫やレンズなどの補助具の使用、目以外の感覚器(音や手触りなど)の使用などで補うこともできますが、場合によっては、担任の先生の協力を仰がなくてはならないこともあります。もちろん、一人ひとりの見え方が違うので配慮の仕方も変わってきますが、共通する部分もあります。

    これから何回かに分けて、弱視児の見え方に対する配慮についてまとめていこうと考えています。できれば、学級での指導に負担が少なくて、しかも、弱視児以外の児童にもプラスになるような情報になるよう心がけたいと思っています。