今日の一冊 その5さて「今日の一冊」5冊目は、今村夏子さんの「星の子」です。この本は、2018年の本屋大賞で7位を受賞しました。今村さんは昨年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞しています。私もタイトルと表紙の異様さにひかれて読みましたが、得体の知れない薄気味悪さを感じながら読み進めました。読了後は胃もたれするような感覚です。 主人公のちひろは幼少期とても病弱でした。両親はいろいろな治療を施しますが、あまり効果がありません。ある日、ちひろの父親は同僚に「水」を勧められ、それをきっかけに両親共々新興宗教にのめり込んでいきます。そして、時が経ち高校受験を控えたちひろは、これまで当たり前だと思っていた家族のあり方に疑問を抱くようになります。両親への愛と他者からの視線に葛藤するちひろ。ちひろたち家族はどうなっていくのか。 これまで普通だと思っていたものが、少しずつ崩れていく様が丁寧に描かれており、読んでいるうちに体力を奪われます。はじめは、ちひろたち家族は「おかしい」と思いながら読んでいたのですが、彼女たちを知れば知るほど、私たちと何も変わらないのではないかと思うようになりました。そんな価値観を揺さぶられる作品です。(岡崎) iPadから送信 |
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