卒業式 余韻卒業式 式辞 朝晩はまだ肌寒い日々が続いていますが 昼間の陽気に誘われるように 校庭の桜の蕾が徐々に膨らみかけています。 世田谷区立船橋希望中学校を巣立つ217名の第十ニ期生のみなさん。まずは卒業おめでとうございます。本校に着任して7回目となる卒業式に校長としてこの場に立てることを心からほこりに思います。 さて、12期生の皆さん。3年前の入学式 覚えていますか。この体育館に各家庭1名の保護者と 生徒会代表の先輩が数名だけが入り 皆さんを迎えました。やっと中学生になれた安堵の気持ちとともに「これからどうなるのだろう」という不安の気持ちが きっと 強かったのではないでしょうか。実は私もそんな皆さんと同じ気持ちでした。 今までの先輩が受け継いできた 参列者が圧倒されるような歌声。「新入生、在校生起立」の合図で 体育館の床が揺れるほど気持ちがひとつになった態度。この経験ができない新入生が 果たして伝統を受け継いでくれるのか。このような不安が私の心にありました。 しかし、皆さんはみごとに私の不安を払拭してくれました。さきほどの校歌の歌声は 3年前の入学式で小さなスクリーン越しに校歌を映像でしか見ていない学年とは信じられない力強さです。また 河口湖移動教室や修学旅行に同行して見てきた私が思うこの学年の素晴らしさは オンとオフの切り替えがはっきりできていることです。コロナ禍のため小学校高学年で行動制限がかかり 後輩に示す場面が無くなった時期を 今取り戻しているかのように私には思えてなりませんでした。 今日の卒業式を迎えるにあたり皆さんにぜひ伝えておきたい言葉があります。それは私がこの学校に着任してから 先生方から何度も聞いた「集団力」という言葉です。船橋希望中の強さのみなもとは集団力の強さである。これは紛れもない事実です。でも、そこには個々の生徒が ひたむきに自分と向き合い 努力を積み重ねる事実があるからこそ得られた力なのです。 同じような意味の逸話として知られているのが「三本の矢」です。戦国武将の毛利元就(もとなり)が 3人の息子に授けたという教えです。 1本の矢は簡単に折れてしまうが、3本まとまると折れにくい。 3本の矢のように皆が力を合わせれば毛利家は安泰である という教えですが この話を聞いて 私は材質によってその強さは異なると思いました。固い材質の場合 ある程度までは強いけれど一定の限界を超えるとポキッと折れてしまう。しなやかさがあって3本が互いに密着すると 折れる限界は飛躍的に高まります。集団力の強さもそれと同じです。 個々の人間の強さよりも お互いがしなやかな心をもち 相手によりそい お互いの力を高め合う気持ちをもつこと それこそが集団にとって一番大切な要素だと 本校に7年間いて感じています。 これから皆さんは社会に出て様々な集団に所属すると思いますが フナキボで培った集団力の高め方を ぜひそこの場でも実践してください。 さて、保護者の皆様。本日はお子さまの卒業おめでとうございます。三年前の入学式で私から「中学校で成長するには離れたところからそっと見守ることが必要です。コロナ禍で心配でしょうが 心のつながりだけは離さないようにしてください」とお願いをしました。小学校最後の1年間 満足な学校生活も送れなかった子どもたちに さらに自立を促すとはなんて無謀な と思われた方も多いと思います。さらにこの三年間 十分な説明ができないまま様々な教育課程の変更や修正もありました。にもかかわらず 本校の教育活動にご理解をいただき 学年便りの返信欄や学校公開のアンケートではたくさんの応援メッセージを書いていただいたことが 本校の教員にとって何よりの励みになりました。 おかげさまで 12期生は卒業式前の昨日放課後 本来ならば下校していなければならない時間に ひそかに皆が多目的室に集まりお世話になった学年主任と そして私にまで 紅白のリボンで結んだメッセージカードの束を渡してくれる そんな粋な計らいができる生徒に成長してくれました。これもひとえに 今まで育てていただいた皆様保護者の方の ご苦労とお子さまへの信頼があったからこそである と思っています。 今までのご理解、御協力に本校を代表して感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。 以上、卒業式式辞といたします。 令和6年3月19日 船橋希望学舎 世田谷区立船橋希望中学校 校長 菅野茂男 |
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