『お知らせ・トピックス』のコーナーでは、「今日のできごと」や「おしらせ」、「校長室より」など更新された順に砧中の様子を紹介しております。それぞれの記事をご覧になる場合には、左欄のカテゴリのタグから項目をお選び下さい。

校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.96

テレビのニュース番組を観ていて
いつも気になることがある。
何かの出来事に対して
一般の人たちにインタビューする
「街の声」である。

有名タレントの結婚報道に
街の声は・・
「ショックです」
「素敵な家庭を築いてください」

コンビニの24時間営業見直し報道に
街の声は・・
「ちょっと困りますね」
「時代の流れですから仕方ないです」

報道する側は
意見が偏らないよう
賛否の声をきちんと取り上げている。
私はそのインタビュー映像を観て
「まぁそうだよな」と納得する。

いや、それでも違和感が残るのだ。

📺

「街の声」とはいったい何だろう?

〜みんなが言っているよ
〜君のこと、みんなが言っているよ
〜君のこと、みんなが「変わり者」だと言っているよ

街の声〜みんな〜街の声〜みんな〜〜・・・


四国から上京し、
都会に馴染(なじ)もうとあがいていたあの頃。

地方訛(なま)りを笑われ
ファッションセンスを笑われ
流行のお店を知らないことを笑われ
次第に人から笑われることに
臆病(おくびょう)になっていたあの頃。

それを覆(おお)い隠(かく)そうと
懸命にお調子者を演じていたあの頃。

そんな時に友だちと思っていた人から
私の反応を確かめるように告げられた言葉。

〜君のこと、みんなが「変わり者」だと言っているよ

暗い穴の中へと落ちていくような人間不信。
「みんなって誰?」
「みんなって何人?」
「みんなって、私の事を知っている人たち?」

そんな時に出会った本、
太宰治の『人間失格』。

その小説の中の会話に
私は一筋の光を見出だしたように思えた。


"それは世間が許さない"
"世間じゃない、あなたが、許さないのでしょう?"

"そんな事をすると、世間からひどいめに逢うぞ"
"世間じゃない、あなたでしょう?"

小説を読み終えた私は
「世間」とは他の誰でもない
その人自身のことなのだと思えてきて、
気持ちが少し軽くなっていった。

そう、「世間」も「みんな」も
そして「街の声」も。

🎤

東日本大震災が起きた年のクリスマスイブ。
帰宅途中、たまたま洋菓子店の前で
ケーキを眺めていた私は
テレビかラジオのレポーターに
マイクを向けられた。

「ケーキは誰と一緒に食べられますか?」

一瞬、笑顔で答えようとした私の脳裏に
津波でふるさとを失った人たちの
悲嘆にくれる姿がよみがえってきた。

クリスマスイブを自宅で過ごすことができない
多くの人たちの今なお続く現実。

私はレポーターに頭を下げて
無言でその場を立ち去っていた。
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