卒業式 別れの言葉 3
「早く並んで歌おうよ!」何回この言葉を言っただろう。
練習が全くと言っていいほど上手くいっていない。私たちのクラスは伴奏者がいなかった。だから、CD音源で本番を迎えることとなる。CD音源は私たちに合わせてくれない。私たちが合わせにいかなきゃいけなかった。でも、うまくいかない。教室や音楽室では上手に歌える。だけど、体育館や格技室など広く、反響する場所になると男子、女子、伴奏、全てが合わなくなる。そんな状況から、クラスのまとまりがよくなかった。 男子の練習に私が入って声をかける。みんなが嫌な雰囲気になってはいい合唱ができないと言われていた。必死に、明るい雰囲気を作ろうとできるだけポジティブな声をかける。そんな中で、女子は私が不在の中でもパートリーダー中心に一生懸命練習をしてくれていた。男子の中にも、「音がわからなくなったら、この人の声を聞いて合わせよう」とか改善策を出してくれている人もいた。でも、それでも、クラスのまとまりがよくない状況は続いた。 私たちの出番は三年生の中で一番最初。よくも悪くも印象に残る。伴奏とずれたら全てが崩れて、他クラスの引き立て役で終わってしまう。 二組は練習がまとまっていて、自分たちで意見を出し合いながら練習できていた。 三組は駒ルネにかける気持ちも大きく、聞いている私たちの心を動かす歌が歌えた。 そんな他のクラスを羨ましく思うこともあった。 でも。私は一組がすきだった。辛さはあったけど、段々みんなの歌が良くなっていくのがわかったから。少しずつみんなの思いが一つになっていくのがわかったから。 大地讃頌の学年合唱が終わり、ついに私たちの番。 さっきまで不安でいっぱいだった。でも、本番前の楽屋での練習の時、前で一組のみんなの顔を見ていたら、みんな目つきが全然違って、全力で歌っていた。 やるしかない。今までの練習を無駄には絶対にしない。このクラスならきっと大丈夫。 本番の合唱は本当に本当に上手だった。上手で、感動して、嬉しくて、歌いながら涙が出そうになった。 最初からやって欲しかったけど、このクラスを信じて、ここまで頑張ってよかった。 どのクラスも今まで以上の出来だった。二組だって、全てのパートの人たちの声もしっかり聞こえて、バランスの良い合唱になっていた。 三組は全員の心が一つにまとまって、気持ちが伝わってくる合唱だった。 一組がトップバッターで良い合唱をしたから。もし、一組の合唱で他のクラスの心に火が灯ってくれたのであれば嬉しい。 一年の頃から「三年生になった君たちの歌が楽しみ」と言われていた私たち。 この卒業式では、これが最初の、私たち卒業生の歌。スロースターターなんてもう思いたくない。 これで本当に、私たちが歌う、最後の大地讃頌。最初から、本気で。 |
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