弱視児の色の見え方

弱視児は何らかの形で網膜や視神経のはたらきが弱っている状態であると前にお話ししました。一方、網膜や視神経には、色の区別をする組織があります。網膜や視神経に異常があるということは、色を区別する組織も何らかの形ではたらきが弱っていることが推測されます。  弱視児の中には、相当、低視力(中には点字を使用する程度の盲児)であっても、基本的な色の区別のできるものがいる一方、ある程度の視力があっても、ある特定の色の区別が付きにくい児童がいます。

色覚異常のスクリーニングの方法としては、『石原式色覚異常検査』が有名ですが、弱視児の場合の色覚の問題は、石原式の検査では発見できないことの方が多いといわれています。  それでは、弱視児の色覚にはどんな問題があるのでしょうか。

色には、色相、明度(明るさ・暗さ)、彩度(鮮やかさ)の3つの要素があります。そのうち、弱視児には色相と彩度の弁別の力が弱いものが多いといわれています。ということは、明度差の違いが色の違いの判断基準になることが多いので、たとえば、明度が近い赤・緑・茶色やピンクとグレーなどを混同する弱視児が少なからずいるということです。

つまり、弱視児のための教材は、明度差、つまりコントラストをはっきりつけてあげる必要があるのです。コントラストがきちんとついているかどうかを判断する方法として、モノクロコピーをとることが考えられます。

 下の図は、左は黒板を想定して緑地に白・赤・青・黄色・紫・黄緑・茶色の点を4種類の大きさで描いたものです。

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    下の図ははそれをグレートーンで表したものです。白ははっきり、黄色も何とか見えますが、その他はあまりはっきりしませんし、区別もつきにくい状態です。

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  実際の黒板はもう少し汚れていますから、もっとコントラストはつきにくくなっているはずです。この状態は全色盲など非常に極端な場合ですが、10月号で「板書で色チョークは極力使わないで欲しい」とお願いしたのは、このためです。

 ただ、どの色も大きくなると少しは目立つようになってきます。ですから、どうしても色チョークを使う必要があるときは、かなり太い線や面を塗るような使い方に限定していただければと思います。

色の見え方ももちろん一人ひとり違っています。目の教室でも一人ひとりの見え方を把握する中で、色覚の実態も把握していますので、なにかお気づきの点がありましたら、目の教室までご連絡ください。