続・第11回卒業式卒業式 式辞 早朝はまだ肌寒い日々が続いていますが昼間の春の陽気に誘われるように、校庭の桜の蕾からひとつ、またひとつと花が咲き始めました。 世田谷区立船橋希望中学校を巣立つ258名の第十一期生のみなさん。卒業おめでとうございます。そして通常より短い、2年と10カ月の中学校生活、ほんとうによくがんばりました。 3年前の6月7日。3回に分けての入学式に臨んだみなさんの心には、やっと中学生になれた安堵の気持ちと同時に「これからどうなるのだろう」という不安の気持ちがあったと思います。実は私も同じ気持ちでした。 今までの先輩が見せてきた、参列者が圧倒されるような歌声。「新入生、在校生起立」の合図で体育館の床が揺れるほど気持ちがひとつになった態度。この経験ができない新入生が果たして伝統を受け継いでくれるのか。 しかし、十一期生はみごとなまでに私の不安を払拭してくれました。学校でのあいさつの声は、私がいる六年間でも最高に素晴らしいのではと思うほどです。宿泊行事である河口湖移動教室を経験していないのに、修学旅行で全ての班が遅れることなくホテルに帰ってきたのは奇跡だ、と思いました。コロナ禍の混乱を考えると、十一期生の成長度はフナキボ史上最上位に位置すると言っても過言ではありません。 ただし、今の姿に成長できた陰には、実は先輩たちの存在があります。2ヶ月遅れで入学したみなさんのためにロイロノートでメッセージを送ってくれた9期生。3年生として勉強や受験がどうなってしまうか、見通しがつかない中でも、新入生を心配し「期待よりも不安の方が大きいと思う」という気遣いができることは、受験を経験したみなさんであればどれほどすごいことか、わかると思います。やはりフナキボの先輩はすごい。そのような歴代の先輩たちの存在がみなさんの成長の礎になっていることを忘れないでください。そしてその先輩たちを育てた先生や保護者の存在があることも。 そして、今日この卒業式でもうひとつみなさんに伝えたい言葉があります。それは『三度目の正直』です。この言葉は「一回目、二回目がダメでも三回目にはうまくいく」という使われ方が一般的です。 実はこのことわざ、古くは『三度目の神正直』といわれていました。 『神正直』の「神」は神様の「神」。「神」が正直の頭に宿る、ということです。『物事をあきらめず、何度もチャレンジする正直な人のところに神様はやってくるんだよ』という言葉でした。 運動会や合唱コンクールは中学校で三度チャレンジできます。1年、2年の時にはかなわなかったけど、3年生で優勝できた、という時がまさに「三度目の正直」です。では、優勝できなかった人のところには神様はやってこないのでしょうか。いいえ。例え優勝できなかったとしても、3年生の時の運動会、合唱コンクールが一番印象に残っている、というフナキボ生は多いはずです。それは「中学最後の行事を全力で取り組んでクラス全員の気持ちがひとつになった。三度目にして、初めてその達成感をえられたので、優勝しなくても満足です」ということでしょう。その気持ちこそが神様が与えてくださったもの、と昔の人は考えました。 人生100年時代。みなさんは、あと85年は生きられます。いろいろなことに全力でチャレンジしてたくさんの神様を味方につけてください。 さて、保護者の皆様。本日はお子さまの卒業おめでとうございます。三年前の入学式で私から「中学校で成長するには離れたところから見守ることが必要です。心配でしょうが、心の距離だけは離さないようにしてください」とお願いをしました。入学式が遅れたというだけでも不安な子どもたちに、自立を促すとはなんて無謀な、と思われた方も多いと思います。さらにこの三年間、十分な説明ができないまま様々な教育課程の変更や修正がありました。にもかかわらず、本校の教育活動にご理解をいただき、学年便りの返信欄や学校公開のアンケートではたくさんの応援メッセージを書いていただいたことが、本校の教員にとって何よりの励みになりました。おかげさまで、コロナ禍で例年の教育活動ができなかったにも関わらず、十一期生は歴代卒業生に勝るとも劣らぬフナキボ生として本校を巣立つことができます。今までのご理解、御協力に本校を代表して感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。 以上、卒業式式辞といたします。 令和五年三月二十日 船橋希望学舎 世田谷区立船橋希望中学校 校長 菅野茂男 |
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