6月6日 図工室より(1)

 毎年、世田谷区の小学校5・6年生を対象に「環境ポスターコンクール」が開催されています。先日、コンクールの結果が発表され、駒沢小学校の5年生から特選2人、入選5人が選ばれました。応募総数845人中、特選が3人、入選が27人の狭き枠に7人が受賞したわけですから、それなりに高い評価をいただいたとうれしく受け止めています。
 これらの作品は、彼らが4年生の3学期に、「環境問題をポスターで伝える」という授業で取り組んだもので、コンクールには全員が出品しました。通常、第三者が評価を決めるコンクールを目的に授業をすることはありませんが、意欲的な5年生から「やってみたい」という声が多数上がり、せっかくの機会なのでポスターとは何か、考えかた、つくりかた、見かたを学ぶ目的で、3月に入って急遽行った授業でした。
 ただ、「だれに(対象)、何を(主題)、どのように(表現方法)伝えるか」を総合的に考え、さらに表現としての完成度まで求められるポスター制作は、小学生にとっては、難易度の高いデザインの分野です。また、現在の小中学生を対象とした完全手描きのポスターコンクールの文化と、街に溢れている宣伝や広告、告知を目的としたポスターでは、そもそもの考えかた、制作方法、評価方法に大きな隔たりがあり、学校の授業として取り組むことには、正直なところためらいがありました。なので、授業ではポスターを制作する上でもっとも大切なこと、“だれにどんなメッセージを伝えたいか”という本質的な問題を子どもたちがどのように構築していくかという過程を重視し、作品としての完成度は最優先しない前提で授業を進めることにしました。
 まず、最初に行ったことは、子どもたちにとって一番身近な環境問題を思いつく限り書き出す作業でした。そこから、自分が一番伝えたいメッセージを整理し、短くインパクトのあるキャッチコピーを考えました。“一番身近な”としたのは、いくら大切なことでも子どもたちにとって実感のないテーマ設定だと、ポスターに込める思いがどうしても弱くなってしまうからです。その後、図書室の資料を参考にスケッチをしたり、キャッチコピーと絵をどのように配置するかを考えたりしながら制作を進めていきました。
 さて、そうやってできあがったポスターはというと…。家族が地域でゴミ拾いの活動をしている姿や、上級生がこっそりペットボトルのキャップを投げて遊んでいる場面から着想を得たもの、漫画のコマ割りを使い、つい読みたくなる仕掛けを施したものまで、子どもたちの気づきや経験がきっかけとなり生まれたポスターがたくさんできました。
 受賞した7人のほかにもすばらしいアイデアの作品がたくさんあります。ポスターは描いて終わりではなく、伝えたいメッセージを誰かに見てもらうところまでが役目です。そのうち学校内外に掲示したいと考えています。(図工専科)

 写真上:ワークシートに書き出した身近な環境問題とキャッチコピー
 写真中:アイデアスケッチ
 写真下:制作風景


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