卒業式(校長式辞)世田谷区立東深沢中学校、第61回目の卒業生として本校を巣立つ、143名の皆さん、卒業おめでとうございます。 校長として皆さんとともにこの場に立てることをとてもうれしく思います。 特に、これまでのあたり前があたり前でなくなってしまっている今の状況において、この日を迎えられたことを本当にうれしく思っています。 さて、卒業生の皆さん。私はこれまでに「東深沢中だより」や校長講話などを通じて様々なスキルについてお話をしてきました。 少しは覚えていますか。 校長面接では、身に付けたい力として、多くの人がそのスキルについて答えてくれました。 私はとてもうれしかったです。 それでは、皆さんに対して、最後の質問をします。 「皆さんはあるハンバーガーチェーン店のレジで働いています。 ハンバーガーが平日半額セールになり五十五円と格安になりました。 これによりハンバーガーの売り上げが伸びたので大忙しです。 ある日、校長先生みたいな体形のお客さんが、ハンバーガーをレジで二十個注文しました。 さて、マニュアルでは、皆さんは『こちらでお召し上がりですか?お持ち帰りですか?』と聞かなければなりません。 皆さんはマニュアル通りにお客さんに聞きますか。」 皆さんはどう判断し、どう答えるのがよいと思いますか。 もちろん正解はありません。 この場合は、「お持ち帰りですか?」とだけ確認することが適切かなと思います。 マニュアルワーカーとナレッジワーカーという言葉があります。 アルバイトやパートタイムで働いている人たちは、マニュアル通りに仕事を進めることが求められます。 これが、マニュアルワーカーです。 しかし、正社員の場合は、頭と知恵を使って創意工夫することが求められます。 これが、ナレッジワーカーです。 「ナレッジ」とは知識や情報、知見といった意味を持っています。 ビジネスシーンにおいては、文字として可視化された情報だけではなく、体験から得た技術や技能、経験などを含めて「ナレッジ」と呼んでいるそうです。 皆さんは、3月31日で義務教育を終了します。 そして、いずれは社会の中で活躍する日々が訪れます。 その頃は、マニュアルワーカーはAIが担当しているかもしれません。 だからこそ求められるのが、この「ナレッジ」です。 皆さんが様々な体験や学習から習得したことをどのように活用するのか、そして、さらに考え、その先の創意工夫や改善まで意識していくことがとても大切だということが分かると思います。 このコロナ禍のように、マニュアルではどうにもならないことが起こるのが社会です。 この危機を乗り越えようと、多くの人が様々な場面で頭と知恵を使って頑張っています。 次は皆さんが頑張る時です。 今日から合言葉は「ナレッジ」です。 HIGASHIの生徒のよいところは仲間を大切にすることです。 校長面接で友達やクラスメイトとのかかわりについて質問した答えから、友達やクラスメイトへの「気遣い」と「尊重」を感じました。 人はみんな違います。 皆さんは、その違いを当たり前のこととして受け止めています。 それはとても素晴らしいことです。 次はそのことを自分自身の中だけに留めず、どんどん広げていってほしいと思います。 そして、皆さん自身の力で差別や偏見のない世の中をつくってほしいと思います。 誰とでも一緒に成長できる皆さんなら必ずできます。 最後になりましたが、 保護者の皆様にひとことお礼を申し上げたいと思います。 この三年間、本校の教育活動にご理解とご協力をいただきまして本当にありがとうございます。 保護者の皆様の支えがあったからこそ、教職員一同、自信をもって教育活動に当たる事ができました。 そして、その支えがあったからこそ、今の卒業生の姿があるのだと思っています。 心から、感謝を申し上げます。 そして、卒業生の皆さん、この様な状況の中でも、HIGASHIの伝統を守り、さらに、進化させてくれたことに感謝します。 令和四年三月十八日 みしまの森学舎 世田谷区立東深沢中学校 校長 本田 仁 |
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