卒業式 別れの言葉 4
二月二十一日、私は緊張に包まれた教室で試験が始まるのを待っていた。始まってからはあっという間だった。試験終了のチャイムが教室に響き渡る。全身の力が一気に抜けた。私の頭の中は不安よりも、「全力を出し切った」ということでいっぱいだった。
三月一日、結果発表日。私は涙を必死に堪えながら急いで学校に登校した。応接室で結果を伝えて教室に向かうと、一時間目の体育が終わって戻ってきた一組の女子とすれ違った。ずっと応援してくれていた友達にはいち早く結果を伝えなきゃと思って伝えると、「そっか」と一言だけ言った後、優しく私の手を握ってくれた。 一通り授業をうけ、早退することを担任の先生に伝えた。先生は私の状況を気遣ってくださって、悲しい表情をしながらも優しく対応してくれた。 応援してくれた人たちの期待に応えられなかった。幼い頃から行きたくて行きたくて仕方がなかった高校。あの高校に二度と行くことはないんだ。それを考えると涙が止まらなかった。将来の夢や高校に通う楽しみな気持ち、周りの人がくれた期待の思いや応援の言葉、今まで私の中にあったものが涙で流されていった。 空っぽになった私を見て、お母さんは優しく抱きしめて、「絶対大丈夫だよ。誰にも染まらずに、自分を貫き通しなさい。進んだところで何をするのかが大切だよ。」と言ってくれた。進んだところで何をするのかが大切。そう聞いて、先生のことを思い出した。先生にも何度か言われたことがある。 そうだ。私の周りには、私のことを応援してくれる家族や友達、先生がいた。 一番行きたかった高校の学校説明会に、朝早くから付き合ってくれたお母さん。 お母さんは、試験の前日にカツ丼を作ってくれたよね。 いつもはそんなに話さないのに、試験の数日前には「大丈夫だよ」って声をかけてくれたお父さん。 お姉ちゃんは自分の高校生活で忙しいのに、嫌な顔一つしないで私が数学が苦手だから夜遅くまで勉強を教えてくれた。 おじいちゃんやおばあちゃんは、合格にご利益のあるお寺に行って「○○の受験がうまくいきますように」とお祈りをして、お守りやお札を私に届けてくれた。 試験前日に「頑張ってね」ってラインをくれた友達。 「○○さんなら絶対大丈夫だよ。」とずっと言って、推薦書も書いてくださった先生。 そんなみんなに申し訳ないと思っていた。だけど。私の家族や友達や先生は結果なんかで判断しない。私は一人じゃない。どんな時でも、私には、私のことを大事にしてくれている人がいる。私は、進んだ場所で私らしく笑顔で過ごすんだ。 今では新しい高校生活がとても楽しみだ。空っぽだった私の中は今も少しずつ変化している。 新たな世界の入り口に立ち、気づいたことは一人じゃないってこと。 瞳を閉じればあなたが瞼の裏にいることで、どれほど強くなれたでしょう。 あなたにとって私もそうでありたい。 |
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