校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.70
「嵐山の竹が泣いています・・・」
一年前、京都の観光会社が ネット上に被害を訴えた。 竹林で有名な京都・嵐山。 100本以上の竹に落書きが相次いで発見されたのだ。 数日前、私はその竹林の小径(こみち)を歩いてみた。 「幽玄(ゆうげん)」「雅(みやび)」 そんな言葉が似合う趣(おもむき)ある散策路。 遠い過去へとタイムスリップしたような感覚。 次世代へと引き継ぎたい景観である。 観光客の増加に比例して マナー違反も増加しているという。 竹に刃物で自分の名前などを彫り、 それをSNSに投稿するというのだ。 知人に見せびらかしたいためだけの 視野の狭い自己主張。 長い歴史の中で受け継がれてきた自然美に対して、 悲しいまでの現代人の浅はかさである。 🏞️ 🏞️ 🏞️ 🏞️ 高畑勲監督作品 映画『かぐや姫の物語』(2013年)。 水墨画と水彩画を融合させたような 不思議な魅力をもつアニメーション。 もちろん原作は日本最古の物語と言われる 『竹取物語』である。 映画では草や木、花が丁寧に表現され、 日本の自然の豊かさを味わうことができる。 この作品の中で、自然をいとおしみ、 自然と共に生きる人びとの姿が描かれている。 私たちの先人はそうやって自然の美を 時を超えて次世代へとつないできたのだ。 映画の主題歌である『いのちの記憶』 その歌詞の一節。 いまのすべては 過去のすべて 今ある遺産は過去から引き継がれてきたもの。 映画のラストシーン。 月からの使者がかぐや姫に 汚れたこの地から月へ戻るようにと告げる。 しかしかぐや姫は それを認めようとはしない。 「この地は汚れてなんかいないわ! この地に生きるものはみんな 彩(いろどり)に満ちて! 鳥、虫、けもの、草木花、人の情・・」 そう、かぐや姫は信じている。 この地に住む人の情は決して汚れていないと。 🌿 🌿 🌿 🌿 竹林の小径を歩きながら、 ふと気がつくと『いのちの記憶』を口ずさんでいた。 いまのすべては 過去のすべて いまのすべては 未来の希望 ・・・ ![]() ![]() |
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