『富岳の眺め』No.94 余録
『男はつらいよ』の魅力の一つが
毎回、寅さんが惚れてはふられる 女性たち(マドンナ)である。 昭和を彩(いろど)った女優たちの名演。 その美しさに、立ち居振舞いに、 映画の中の寅さんと同じように 見とれてしまった観客も多いことだろう。 先日亡くなられた八千草薫さんもその一人。 私が見る限りでは 映画の中で八千草薫さん演じる千代は 明らかに寅さんに恋慕を抱いている。 それなのに全く気づかない寅さん。 そのもどかしさに 観客も「何やってんだ」とイライラする。 いや、もしかしたら寅さんは 気づいているのかもしれない。 それでも一歩を踏み出せない不器用さ。 それが寅さんなのだと改めて思う。 👘 現在NHK総合で土曜夜に放送中の ドラマ『少年寅次郎』。 そう、寅さんの少年時代を描いた 『男はつらいよ』エピソード0である。 実は『男はつらいよ』の世界観が壊されるのではと 放送前、私は観ることをためらっていた。 第1話だけ観て、 今一つだったら、それ以降観るのはやめよう、 そんな軽い気持ちで見始めたのだ。 そして今、完全に虜(とりこ)になってしまった。 『男はつらいよ』全49作品との見事な調和。 特に育ての母親役を演じる 井上真央さんの演技に涙腺が緩みっぱなしである。 成人した寅さんがその後出会うマドンナたち。 その原点は育ての母親にあったのではと思わせる。 昭和の大女優たちの魅力を 見事に体現した井上真央さんの演技に 令和の女優への期待が高まる私なのである。 ※『富岳の眺め』No.45(2018年12月1日up)でも 『男はつらいよ』を取り上げています。 左欄「過去の記事」から「2018年度」を、 そして「12月」を選んでください。 |
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