人格の完成をめざして 〜子どもたちが道徳性を伸ばし、市民としてのよりよい生活習慣を身に付けることを願って〜
平成19年度より 世田谷区「人格の完成をめざして」推進校
よい行動とはどのようなものか、よい人になるとは具体的にどのようなことを指すのか、よい行動を実際にどのように実行すればよいのか、よいことが何かを知り、よいことを愛し、よいことを実行することで、世界に通用する人、親切で温かい責任感ある地域、誇りのある地域を形成する未来の市民を育成することをめざします。
取り組みを進めるに当たって大切なことは、子どもたちが自分自身でよく考えること、子どもたちが自分自身でよく考え、自ら行動すること、子どもたちが自分自身でよく考え、自ら行動したことを、自分自身で振り返ること、です。
4つのポイント
- 生徒たちが普段の自分の行動を振り返り、自分自身でよく考えることを大切にする ○振り返る○個の尊重○考える
- 生徒たちが自分自身で自分自身の目標をたてることを大切にする ○目標を立てる○小さな目標○目標を認める
- 学校全体で創意工夫ある取り組みを進める ○自らの行動で○ポスター掲示○図書○講話・話
- 学校と家庭、地域が連携して取り組むこと ○情報の発信○保護者、地域と連携
テーマ | キーワード | ねらい | ポスター | |
4月 | 挨拶 | 心の扉を開く、人とのつながり、礼節 | ○挨拶を通して心の扉を開き、気持ちを通わせたりコミュニケーションをしたりする喜びをあじわい、知る。○挨拶を通して、家族や先生、友達との心のつながりを深める。 | 心の扉を開く挨拶をしていますか?★ 「いってきます」と「ただいま」を必ず言うようにしています。★ 毎日、気持ちのよい挨拶をしています。★ 挨拶をして、友達や先生と気持ちを通わせています。★ 挨拶で地域の人々とのつながりを広げていきたいです。 |
5月 | 思いやり | 親切、 まごころ(真心)、 助け合う心 | ○その人の心中を察しながら、相手の立場でものごとを考えることができるようになる。○人の喜びや悲しみを自分のものとして、行動できるようになる。 | 人の喜びや悲しみを感じて行動していますか?★ まごころを込めた親切を心がけています。★ 小さなことでも相手の立場に立って行動します。★ 友だちが喜んでいると自分までうれしくなります。★ 授業や部活動などで、友だちと励まし合っています。 |
6月 | 責任 | 役割を果たす、 まじめ、 法遵守 | ○自分のやらなければならないことや役割を自覚できるようになる。○自分のやらなければならないことに、一所懸命取り組むことができるようになる。 | あなたの役割を自覚して行動していますか?★家族の一員として毎日家事を分担しています。★自分のやらなければならないことに一生懸命取り組みます。★社会のルールや法律を守ります。★自分の約束したことは、最後までやり遂げます。 |
7月 | 良心 | 正直、誠実、自律 | ○何が善いことで何が悪いことなのかを常に自問し、自らを律して、悪いと思うことをせず、善いと思うことができるようになる。○他者にも自分自身にも誠実に行動することができるようになる。 | 自らを律して行動していますか。★何がよいことで何が悪いことかを自問しています。★友達にも、自分にも誠実に行動しています。★他の人に迷惑をかけることはしていません。★うそをつかず、正直を心がけています。 |
8月 | 生命の輝き | 生かされている命、自然愛、生きる希望 | ○生命の重要性、連続性、有限性を深く考え、自他の生命を尊重することができるようになる。 | 生命の尊さについて考えていますか?授かった大切な生命、生命を大切に慈しんで生きていきます。 |
9月 | 勇気 | 挑戦する心、 克己、 積極性 | ○正しいと思うことは、進んで行うことができるようになる。○理想と志をもち、より高い目標に向かって、取り組むことができるようになる。 | 理想と志をもち、より高い目標に向かって、積極的に取り組んでいますか?★ あきらめず、何度でも挑戦します。★ 自分の過ちに気付いたら、率直に謝ります。★ いじめなど「良くないことは良くない」と、はっきり言えます。 |
10月 | 公共心 | 社会の一員、 ボランティア、 マナー | ○公共物を大切に扱うとともに、公共の場でのマナーを身に付ける。○社会の一員としての自覚をもち、社会や人のために行動する喜びを知り、進んで実践できるようになる。 | 地域や社会の一員としての自覚をもって行動していますか?★ 電車やバスの中など、公共の場でマナーを守っています。★ ボランティア活動をして人に喜ばれるとうれしいです。★ 建物や公共物などへの落書きはしません。 |
11月 | フェア | 公平・公正、 人権の尊重、 寛容 | ○自ら公平・公正に考え、利己心無く行動することができるようになる。○誰に対しても偏見をもたず、差別することなく接することができるようになる。 | かけがえのない−人の人間として、互いの人権を尊重し、公平・公正に行動していますか?★ スポーツの試合などで、フェアな精神で全力を尽くします。★ いじめなど、卑怯なことは絶対にしません。★ 率直に謝られたら、広い心で受け入れます。 |
12月 | 寛容 | 広い心、謙虚、温厚、人間愛、落ち着き | ○冷静にものごとを考え、相手の気持ちや立場を理解しようと努めることができるようになる。 | どんな人も差別しないで受け入れていますか?人の失敗を責めたりしません。少ない意見も大切にして考えます。落ち着いて、その人の気持ちを察して行動します。 |
1月 | 感謝 | 尊敬、 感動、 お礼 | ○自分を生かしてくれている自然や、自分の生活を支えてくれている人々の存在に気づき、感謝の心をもつことができるようになる。○人の厚意や親切に対して、心から謝意を表すことができるようになる。 | 私たちを見守り、支え、育ててくれている人たちに、感謝の気持ちを伝えていますか?★ 人の親切や厚意に、いつも「ありがとう」と言います。★ 勉強やスポーツに毎日力いっぱい取り組めるのは、たくさんの人のおかげです。★ 地球上の生命の一つとして、私達は自然の恵みの中で生きていることを大切にします。 |
2月 | やりぬく心 | 努力、勤勉、忍耐、向学 | ○目標に向かって、心をしっかりもって、努力し続けることができるようになる。○困難なことに出会ったとき、努力して切り拓いていくことができるようになる。 | 自分の目標に向かい、努力し続けていますか?★ 継続して、毎日読書を続けています。★ 自分でやると決めたことを、最後までやり遂げます。★ 困難なことに出会っても、決してあきらめず、−歩一歩努力します。 |
3月 | 誠実 | 真心、一生懸命、調和 | ○いつも自分をふり返り、自分を高め、他の人と調和して、よりよく生きることができるようになる。 | まじめに、真心をこめて生活していますか?誰に対しても真心をこめて接します。仕事はまじめに、一生懸命やります。誰かの喜ぶ顔が見たいから。 |
ポスターの掲示
駒沢中学校では、「人格の完成をめざして」のポスターを掲示し、中学生の主体的な道徳的実践を促しています。また、必要に応じて、全校朝会の校長講話、学級活動での学級担任ミニ講話、教育相談での目標設定やあいさつ運動、生徒会活動など、生徒の様子と教育活動の予定を考慮して取り組んでいます。駒の学び舎の小学校との連携も検討しています。
▼道徳教育と「人格の完成をめざして」 ▼道徳的価値と「人格の完成をめざして」対照表駒沢中学校オリジナルポスター
▼8月 生命の輝き ▼12月 寛容 ▼3月 誠実ポスター 世田谷区教育委員会
広島大学とアメリカからの視察の様子
2012年11月26日(月)午後、広島大学の青木先生、川合先生お二人とアメリカから来日された先生お二人、通訳の方お一人が駒沢中学校に来校しました。Bernice Lerner 先生は、全米で品格教育(Character Education)を推進してきたボストン大学のセンターの元センター長です。このセンターは,日本でよく知られているリーコーナ先生とともに品格教育を推進してきたケビン・ライアン博士によって,1989年にボストン大学に設立されました。先生は、品格教育は,学校教育の中で重要で避けられない任務であるという確信をもってその普及に取り組んでこられ、また、品性にかかわる知恵はすばらしい文学(芸術作品、歴史、数学と科学)の中に蓄積していると考え,著書も執筆しています。Karen Newman先生は、幼稚園年中組から高校まである私立学校,モンテクレ−・キンバレー学園のdirector or curriculum and professional developmentで、カリキュラムの開発,教員研修の専門家です。モンテクレー・キンバレー学園は,全米でも早くから品格教育に取り組んだ学校で,倫理学や読み書きに力を入れたプログラムを行い,1999年にはブルーリボン賞(全米の優秀学校賞),2003年には,National School of Character(全米の品格教育の賞),2009年には,保護者の投票でニュージャージー州ナンバー1の私立学校に選ばれたそうです。お二人の先生を待っていたのは、3年生の男子によるウェルカムセレモニーでした。その後、授業を見て回りました。3年生の英語(スピーチ)と1年生の音楽(箏)の授業など、全教室を参観しました。2年生の廊下に張ってある道徳の時間の掲示物などにも興味深く見入っていました。校舎を回った後、本題である「日本の道徳教育とアメリカの品格教育」などについて、校長室で1時間以上、話し合いました。帰り際に、広島大学の先生もアメリカの先生も「駒沢中学校の生徒はとても温かい。先生方もICTを使って授業を分かりやすくしていてすばらしい。ありがとうございました。」と話してくださいました。一緒に来校した通訳の方、区の教育委員会の方も駒沢中学校を絶賛してくださいました。
「人格の完成をめざして」を進めるに当たって 広島大学大学院 青木多寿子先生
私たちは、自然の恵みや社会の仕組み、家族や仲間、地域の人々の支え、そして、この地域をつくり、発展させ、守ってきた先人達の努力があって、今日生活しています。今生活しているこの地域がより住みやすい街になるための努力は、決して大人だけの営みではなく、現在の小学生や中学生にもできることです。小さなことでよいのです。例えば、落ちている空き缶を拾う、挨拶をする、マナーを守るなどのちょっとした行動が重なると、地域は明るく、温かく、親切な住みやすい街になります。子どもたちにもできることはたくさんあるのです。一人ひとりの小さな行動が社会全体に大きな影響を与えます。挨拶をすること、微笑むこと、あたたかい手を差し延べること、優しい言葉を掛けること、手伝いをすること、少しだけ他者に譲ること、自分の役割を果たすこと。一人ひとりのちょっとした行動の積み重ねがよりよい生活習慣となり、地域や社会全体の調和を生み出してゆきます。一人ひとりの行動が大切なのです。誰もが優しい心をもっています。それを行動に表すことによって、人と人が繋がり、心と心が繋がり、社会の調和へと繋がります。誰でも、人に助けられたり社会に救われたりしながら生きています。しかし、行動に表さないものは、誰にも見えず、何も伝わりません。一歩前に踏み出し、気持ちを表す行動が大切なのです。「人格の完成を目指して」では、子どもたちが、月々のテーマについて自分を振り返り、考え、行動をすることを通して、「自分も嬉しくなり、人も喜ぶ」ということを心で感じてほしいのです。できるときに、できる人が、できることをやって、学校や家庭、地域を住みやすくする。小・中学校の9年間の取り組みを通して、そのことに気付き、自分なりに行動できる子どもたちに育ってほしいと願っています。