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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.5

公開日
2018/04/29
更新日
2018/05/04

校長室より

昨夕、第1回の学校運営委員会が開かれました。
各委員からは学校へのエールとともに、
様々なご意見ご助言をいただき、
改めて学校運営を客観的立場から見つめ直すことができました。
 
頂戴したご意見一つ一つを吟味し、
今後の運営に反映していきたいと考えております。

委員の筑波大学渡辺三枝子名誉教授から、こんな事例が紹介されました。

ある学校で生徒が、塾で既習済みの高度な内容について発言をした。
他の生徒は未習のため、その内容についていけない。
その時、担任の先生は発言した生徒の立場も尊重しつつ
一方で他の生徒からの意見も引き出しながら、
クラスの生徒たち全員を傷つけることなく授業を締め括った。
高度な内容についても、予習的にきちんと触れながら。
教師のコーディネート力の高さが授業の質を高めることになる。

   ☆     ☆     ☆     ☆

私はこのお話を伺いながら二十年前のある授業風景を思い出していました。
当時私が勤務する中学校で、初任の理科の先生が研究授業を行いました。
 
授業は「磁石」について。

順調に授業は進行し、残すところ数分となりました。
先生が生徒たちに問いかけました。

「最後に何か質問ありますか?」

本来なら、このまま質問もなく、無事に研究授業が終わるはずでした。
と、その時、一人の生徒が手をあげたのです。

「先生、棒磁石のS極とN極の境目はどんなふうにつながっているんですか?」
一瞬の沈黙。
そして授業終了のチャイム。

先生はそのままスルーして教室を後にしたのです。
その後の教員同士の意見交換会では、この点に議論が集中しました。

「あの質問こそ、まさに生徒の探究心だった。」

「先生が答えられない質問こそ、生徒の学習力を高めるものだ。」

翌日、初任の理科の先生は、その生徒のところへ行き、
 
「先生もわからないから、一緒に考えようね。」と語りかけました。

その生徒は現在、エンジニアとして活躍しています。
生徒の発言の中にこそ、授業力向上のヒントがあるのかもしれません。