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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.31

公開日
2018/08/26
更新日
2018/09/23

校長室より

ミステリー小説の醍醐味(だいごみ)は
緻密(ちみつ)に張り巡らされた伏線(ふくせん)にある。

その伏線を読み解きながら
自らも真犯人を突き止めていく。

謎が解けた時の誇らしい爽快感。
完全にしてやられた時の心地よい敗北感。

まさに作家と読者の真剣勝負である。

江戸川乱歩
横溝正史
コナン・ドイル
アガサ・クリスティ
       ・・・・
私がこれまで勝負を挑んできた
ミステリー史にその名を連ねる東西の作家たち。

もちろん圧倒的に負け続けてはいるが、
これまでの度重なる勝負を通して
私に読む力が備わったことは確かである。


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ミステリー小説は決して犯罪小説だけではない。

今年の本屋大賞受賞『かがみの孤城』(辻村深月)

前半の趣(おもむき)はファンタジー小説。
しかしその前半部分に見事なまでに伏線が張られている。

学校で居場所をなくし、不登校になった中学1年生の安西こころ。
ある日、自宅の部屋の鏡が突然光り出し、
彼女は鏡を通り抜けることができた。

その不思議な鏡の中の世界で、
自分と同じ境遇にある6人の中学生たちと出会う。

なぜこの場所で、この7人が出会うことになったのか?
鏡の中のお城を管理していると思われる
オオカミのお面をつけた少女の謎とも相まって、
後半では一つ一つの伏線が回収されていく。

結果的に私は作者との勝負に敗れることになったが、
最終章では胸に熱いものが込み上げてきた。



作者がインタビューで語っていた。

この本は、子どもと、
そしてかつて子どもだった全ての人に向けて書いたと。

そしてもしタイムマシンがあったとしたら
10代の頃の自分に贈りたい作品であると。


  📚    📚    📚    📚


このコラムを書くにあたって
私はもう一度小説を読み返した。

そして今、
コラムを読んで頂いているみなさんに
私からのメッセージとして次の言葉を伝えたい。

 〜 大丈夫、あなたの居場所はきっと見つかる 〜