校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.40
- 公開日
- 2018/10/28
- 更新日
- 2018/10/28
校長室より
なぜだろう?
合唱曲を聴くと必ず胸が熱くなる。
メロディーや歌詞の素晴らしさはもちろんのこと、
一曲一曲に様々な思い出が
詰(つ)まっているからかもしれない。
教師にとって合唱曲は
これまで出会った生徒たちとの
数々の思い出の宝箱。
抱き合って喜び合う生徒の姿
下をうつむき涙をこらえる生徒の姿
合唱曲を聴くと
何十年も前の情景がオーバーラップする。
🎼 🎼 🎼 🎼
ある合唱曲を聴きながら
机に伏して泣いていた女子生徒の姿が瞼(まぶた)に浮かんだ。
私がまだ「若手」と呼ばれていた頃・・・
優勝(金賞)間違いなし、と周囲から思われていた
当時担任していたクラス。
しかし結果は予想に反して無冠。
先頭に立ってクラスを引っ張ってきたその女子生徒は
帰りの学活が終わっても
机から離れようとはしなかった。
私は彼女を慰めようと思い、話しかけた。
「結果は残念だったけど、
優勝したクラスには決して負けていなかったよ。」
泣き腫(は)らした瞳で
彼女は私を見上げた。
次の瞬間、我が耳を疑った。
いつも温厚な彼女が
私に向かって初めて声を荒げたのである。
「そんな気休め、言ってほしくない!」
がっくりと肩を落とし、職員室に戻った私は
副担任で先輩のS先生に教室での出来事を相談した。
私の話を静かに聴いていたS先生は
しばらく考えてから私にこう語りかけた。
「今、彼女に必要なのは慰めの言葉じゃなく、
誰かが寄り添ってあげることじゃないかしら。」
生徒たちは挫折を乗り越えながら成長する。
教師はその挫折に向き合いながら成長する。
🎼 🎼 🎼 🎼
砧中学芸発表会、
閉会式後のこと。
ある教室の前を通りかかると
机に座って泣いている生徒の姿があった。
あの日の生徒の姿と重なった。
笑顔で帰路に着く生徒
肩を抱き、寄り添い合う生徒
生徒たち一人一人に物語がある。
その物語が紡がれて
みんなの物語が完成する。
私たちの平成最後の物語が。
※ 今年度の砧中学校学芸発表会のスローガンは
『紡げ!!私たちの平成最後の物語』でした。