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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.42

公開日
2018/11/11
更新日
2018/11/11

校長室より

家庭科の授業でのこと。

「食品を買う時は、棚の前に置いてある食品を買いますか?
 それとも後ろに置いてある食品を買いますか?」

ちょうど教室を覗(のぞ)いていた私が当てられた。

「後ろに置いてある食品を買います」
私は自信満々に答えた。

「その理由は?」

「後ろに置いてある食品の方が賞味期限が長いから」
生徒たちも頷(うなず)いている。

「なるほど。そうですね。
 もし、みんなが今の理由で賞味期限が長い食品を買うとしたら
 賞味期限が短い食品が売れ残ってしまいます。
 そして、賞味期限が切れてしまった食品は?」

生徒が答える。
「廃棄されます」

「そうです。つまり食品ロスの問題にもつながるのです」

私はハッとした。
何気ない自分の行動。
自分にとってプラスになる行動も
社会全体ではマイナスになることがある。


  🍞    🍞    🍞    🍞


話は19世紀のインドへと飛ぶ。
当時インドはイギリスの植民地であった。

イギリス人領主は毒ヘビのコブラの大量発生に頭を悩ませていた。
そこでコブラを捕まえて届け出た者に賞金を出すと告げた。
インドの人々はこぞってコブラを捕まえて届け出た。

これで一件落着・・・とはいかなかった。

それならコブラを飼育して届け出れば
儲(もう)かるのではないか、と考える者が現れはじめた。
そして各地に「コブラ養殖場」がつくられることになった。

その事実を知ったイギリス人領主。
すぐさま賞金制度を廃止した。

「養殖場」で飼育されていたコブラは必要なくなった。
そして人々はそのコブラを野に放った!!

結果、以前よりコブラの数が増加したという。

決して笑い話ではすまされない。


  🐍    🐍    🐍    🐍


休日、私はスーパーマーケットに立ち寄った。
ヨーグルトを買おうとして、
いつものように冷蔵棚の後ろに置いてあるヨーグルトに
何気なく手を伸ばしかけた。

その時、家庭科の授業のやり取りが
フラッシュバックした。

私はしばらく考えた後、
前の方に置いてあるヨーグルトを買い物かごに入れた。