校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.60
- 公開日
- 2019/03/10
- 更新日
- 2019/03/10
校長室より
2011.3.11の記憶。
当時の勤務先は江戸川区役所。
私は会議室へと向かっていた。
14時46分、途中の廊下で大きな揺れに襲(おそ)われた。
物が落ちて割れる音。
廊下にいた何人かの職員が悲鳴を上げる。
「大丈夫、すぐに収まりますから」
私は周囲にそう告げていた。
その後、召集をかけられた災害対策室で
次々と写し出されるモニターの映像に
その場にいた誰もが言葉を失うこととなる。
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「正常性バイアス」
バイアスとは偏(かたよ)った見方のことである。
人間の脳は異変を感知した時に
極度のストレスを避けようと
これは正常の範囲内だ、と思い込もうとする傾向にある。
「自分は大丈夫だろう」という意識。
自分を落ち着かせるという点からすれば、
この脳の働きには一定の効果がある。
しかし、災害の規模が想定の範囲を越えた場合には・・・
予期せぬ事態に、その後人間は思考停止に陥(おちい)る。
「大丈夫、すぐに収まりますから」
あの日、私が周囲にかけた言葉。
今振り返ると、何か根拠があったわけではない。
「すぐに収まりますから」は
「すぐに収まって欲しい」という
私の願望だったようにも思えてくる。
あの日の地震、「東日本大震災」では
最初の揺れに続く大津波が
多くの被害をもたらしたことは
今さら言うまでもない。
震災後、被災された方々から話を聞く機会があった。
多くの方が同じように話されていた。
揺れの後に警報を聞いてはいたが、
「大丈夫だろう」と思っていたと。
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今年度砧中学校では計11回の避難訓練を行った。
2月に実施した第10回の訓練では
昼休み中に警報を発した。
その時、私は校庭で遊ぶ生徒たちの動きに注目していた。
警報が鳴った直後、
生徒たちは一旦動きが止まったものの
周囲の様子をうかがい、再び遊びを再開した。
周囲が遊んでいるから大丈夫だろう、
これもまた「正常性バイアス」である。
その中からまず誰かが行動を起こす、
いわゆる「率先(そっせん)避難者」の役割が重要視されている。
誰かが動き始めると、
人はその動きに合わせようとするのだ。
災害発生時の心得(こころえ)。
まずは落ち着いて、
しかし行動は素早く、である。
次年度の課題としたい。
✳️映画『遺体 明日への十日間』原作者の石井光太氏をお招きして
3年生特別授業の講演・座談会を開催します。
保護者の皆様もぜひご参観ください。
3月12日(火)11:00〜12:00 本校ランチルール