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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.67

公開日
2019/05/04
更新日
2019/05/04

校長室より

その歌を初めて耳にしたのは
1993年の運動会でのこと。
放送委員の生徒がBGMとして
繰り返し流していたのだ。
全力で走る生徒たちの姿と
歌詞の情景が重なり、
胸が熱くなったことを憶えている。

  負けないで もう少し
  最後まで  走り抜けて

その歌は ・・・
平成を代表する応援ソングと言われる
ZARD(ザード)の『負けないで』。

その年のヒット曲となったにも関わらず
テレビなどへの出演がほとんど無かったことで、
果たしてボーカルの女性シンガーは
本当に存在するのか、と言った
「都市伝説」が生まれることとなる。


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ZARDの155に及ぶ楽曲、
そのほとんどの歌詞を
ボーカルの坂井泉水が書いている。
彼女の残した直筆メモは500枚を越え、
曲にもっともふさわしい言葉を探し、
何度も何度も書き直した跡がうかがえる。

『負けないで』の歌詞もそう。
「目と目が合った様な」を「視線がぶつかる」へ
「あきらめないで」を「走り抜けて」へ
タイトルの『負けないで』も
元々は『あきらめないで』であったと言う。

織田哲郎のアップテンポな曲が
聞く者の心を沸き立たせることは言うまでもないが、
坂井泉水がもしも歌詞を書き直していなければ、
これほど多くの人たちから
支持される歌となっていたかどうか。

 
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見守ってくれる人なんていない、
この歌詞はきれい事だ、幻想だ、と言う人がいる。

しかし、私は別の見方をしている。

私が『負けないで』の中で
最も励まされるフレーズ。

  なにが起きたって ヘッチャラな顔して
  どうにかなるサと おどけてみせるの

そう、私はこの歌を
見守ってくれる誰かからの応援ではなく
自分に向けたメッセージとして受け止めている。
「負けないで」と繰り返すのは
他の誰でもない、自分の心の声なのである。

苦しいな、辛(つら)いな、と感じた時に
今の自分はヘッチャラな顔ができているだろうか
このフレーズを思い出しながら、
自分自身に何度も問いかけてきたように思う。
そしてまた、自分自身に言い聞かせてきた
「どうにかなるサ」と。

応援ソングには、
それぞれの解釈があっていいと思う。
またそれぞれの解釈があるからこそ
歌い継がれ、
誰かを励まし続けているのかもしれない。


2007年5月、
ボーカルの坂井泉水は永遠の存在となった。
「都市伝説」ではなく
本当の意味での「伝説」となったのである。


※参考; NHK BSプレミアム
    『ZARDよ永遠なれ
     坂井泉水の歌はこう生まれた』