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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.80

公開日
2019/08/03
更新日
2019/08/03

校長室より

図書室、というと思い出す映画がある。

同姓同名の男女の中学生「藤井 樹(いつき)」。
クラスメートの策略(さくりゃく)により
二人そろって図書委員にさせられる。

男子の樹(いつき)は、図書委員の仕事に全く興味を示さない。
図書室に来ても、これまで誰も借りたことのない本を借り、
まっさらな貸出カードにせっせと自分の名前を書いている。
そんな一人遊びを楽しんでいる男子の樹(いつき)に
「バカじゃないの」と冷ややかな女子の樹(いつき)。

冬休みのある日、
一冊の本を持って彼は彼女の自宅へと訪ねて来る。
休み明けにこの本を図書室に返してほしい、と。

「自分で返せばいいのに」
首をかしげながらも
本を預かる女子の樹。
裏表紙に挟(はさ)まれた貸出カードには
もちろん「藤井 樹」の名前が書かれている。

そして休み明け、登校した彼女は
その男子生徒が転校したことを知る。

岩井俊二監督『Love Letter』(1995年)

男子の樹が貸出カードに書いた名前は
果たして彼自身の名前だったのか?
それとも彼女の名前だったのか?


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映画のラストシーン。

大人になった女子の藤井 樹。
今は地元の図書館で勤務している。
男子の樹は数年前、山で遭難していた。

彼女のもとに母校の中学生たちから
一冊の本が届けられる。

十数年前、男子の藤井 樹から預かり、
図書室へと自分が返却したあの本であった。

中学生たちが樹を急(せ)かす。
その本に挟まった貸出カードを見るようにと。
「藤井 樹」の名前が書かれた貸出カード。

促(うなが)されるまま貸出カードを裏返した時、
彼女は思いもよらなかったものを目にする。
十数年前、男子の樹が女子の樹に伝えたかった
本当のメッセージを。

その本のタイトルは
『失われた時を求めて』。

十数年の時を超えて、
二人の対話が始まったのである。


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ドキュメンタリー映画
『ニューヨーク公共図書館』
連日、映画館が満席の話題作。

次回(明日)、進化し続ける図書館について紹介予定。