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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.81

公開日
2019/08/04
更新日
2019/08/04

校長室より

ネット全盛の時代。
調べたいものは
何でも瞬時に検索することができる。

そんな時代に
「未来に図書館は不要である」と言う人もいる。
私はそうは思わない。

ドキュメンタリー映画の傑作
『ニューヨーク公共図書館』を観た。
世界で最も有名な図書館、
その舞台裏に迫った3時間半の長編映画。

「図書館は本の置場所ではない、図書館は人だ。」
そのメッセージが繰り返される。

芸術家を招いての講演会、
高齢者向けのダンス教室、
子どもたちへのプログラミング課外授業、
移民への英語講座 
点字や手話講座 等々
その活動は私自身の図書館のイメージを一新した。

さらに驚いたのがWi-Fi機器の無料貸出プログラム。
ニューヨークの住民の約1/3が自宅にネット環境が無い。
情報の格差こそが
人の格差につながるという考えのもと
市民の寄付に支えられながら
人々に平等に門戸が開かれる。

「公立」でもない、「私立」でもない。
「公共」とは市民の寄付を中心としたシステム。
「自分たちの図書館」という意味に近いかもしれない。

だからこそ、図書館の職員は仕事に誇りをもち、
利用者に徹底したサービスを提供する。
電話での市民からの問い合わせにも
職員自身がきちんと調べながら答える。


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映画館を出た後、我が身を振り返る。
最近、何かを調べる時、
果たして自分は何を使っているだろうか、と。
スマホの操作だけで終わらせていないだろうか、と。

ネットでも様々なものを調べることができる。
でもその情報のほとんどが誰かがまとめたもの。

「原典にあたりなさい」
私が中学生の時、社会科の先生がよくそう言っていた。
そして、その原典は図書館にあると。

夏休みの自由研究に四苦八苦しながら、
図書館職員に「こんな本、ありますか?」と尋ねる。
職員が書庫の奥から一冊の本を持ってくる。
「調べたいこと、きっとこの本の中にありますよ。」
学習室に入り、本のページをめくる。
そこにお目当ての資料を見つける。
暗闇の中に一筋の光を見出だした喜び。

汗をかいて調べ、
目的のものに出会えた喜びを
今の中学生にも体験してほしいと願いながら
このコラムの原稿を
地元の図書館の学習室で書いている私であった。