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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.86

公開日
2019/09/07
更新日
2019/09/07

校長室より

夏休み最後の週末。
TVで放映されたアニメ『天空の城ラピュタ』。
知る人ぞ知る、スタジオジブリ制作の第1作。

1986年公開時は決して大ヒットした訳ではない。
当時はまだアニメは子どもが観るもの、
そんな世の中の雰囲気が残っていた。

物語は少年バズーと少女シータの冒険物語。
既に社会人だった私も
今更アニメの冒険物語を映画館で、とは思わなかった。

宮崎駿監督はこの映画に一つの信念を持っていた。
かつて子どもだった大人たち。
子どもたちが喜ぶ作品であれば、
きっと大人たちの心にも届くはず。

宮崎監督のねらいは少しずつ浸透していく。
その後到来したネット社会。
TVでこのアニメが再放送されるたびに
ネット上で話題が広がっていく。

そして冒険物語に込めた、
「平和」を願う監督のメッセージが
様々なシーンの解釈を通して
大人の心にも響いていったのである。

なぜ、天空都市ラピュタは
滅びなければならなかったのか、
少女シータのクライマックスでの魂の叫びは
30年以上経った今でも私たちの胸に突き刺さる。

🏰 🏰 🏰 🏰

映画公開当時、
『ラピュタ』ファンの生徒たちから何度か質問された。
このアニメの中で最も好きなキャラクターは?

その当時はうまく答えられなかったが、
今の私ならきっとこう答えるだろう。

「誰も守る人がいなくなったラピュタの墓に
いつまでも花を手向け続けるロボット兵」と。

ロボット兵・・・ラピュタ住人による創造物。
その使い方によっては
凶暴な戦闘ロボットにもなり、
一方でラピュタの住民を守護する存在ともなる。

ロボット兵のキャラクターこそ
AI時代が到来しようとする現代に向けた
過去からの警鐘(けいしょう)、
私にはそう思えて仕方がない。

🤖 🤖 🤖 🤖

令和となった今も根強い人気の『天空の城ラピュタ』。
この空中都市の空飛ぶ仕組みや構造について
宮崎駿監督は一切説明を加えていない。

なぜだろうか?

原作者から仕組みや構造を聞いて
何となくわかった気分になりたい、
正解を聞くことで安心したい、
そういった心理が私たちにはある。

本当に大切なことは
正解を聞いて納得することではなく、
視聴者一人一人が
自らの想像力を巡らして
自分なりの答えを見出だしていくことではないか。

幼き頃、世界の不思議さに
様々な空想を巡らしていたように。