校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.115
- 公開日
- 2020/03/20
- 更新日
- 2020/03/20
校長室より
No.115【未来へと響く歌】
昨年も卒業式合唱曲だった『あなたへ』。
今年の3年生にとっては、
合唱コンクールの課題曲でもあり、
卒業合唱として思い入れがあったはず。
🎵
なぜ僕だけがこんな目に遭うと
他人(ひと)を羨(うらや)んだりもしたさ
3月に入って以降、
学校へも行けず
友だちにも会えず
卒業行事も経験できなかったからこそ
その歌が一層胸に迫るのではないか。
📓
歌はその時々の自分の心情によって
受ける印象が変わっていくもの。
昭和から平成へと元号が変わった年、
私は初めて3年生を担任した。
私の力不足もあり、3月半ばとなっても
まだ進路が決まらない生徒がいた。
その生徒は行事に参加する事もできず、
卒業直前まで受験勉強に苦しんでいた。
担任の私も眠れない日々が続いていた。
そんな時、クラスの生徒たちが
受験する生徒と私に紹介してくれた歌
それが中島みゆきの『ファイト!』だった。
🎵
暗い水の流れに打たれながら
魚たち のぼってゆく
いっそ水の流れに身を任せ
流れ落ちてしまえば楽なのにね
やせこけて そんなにやせこけて
魚たち のぼってゆく
その歌詞が奮闘する生徒の姿と重なり
聞くたびに涙が出たことを憶えている。
先日、その生徒から連絡をいただいた。
「あの時、志望校には入れなかったけれど
進学した高校で過ごした日々は
最高の三年間だった。
大切なことは
どこへ行くかではなく
そこで自分が何をするのかだ」
と書かれていた。
歳月は巡り
今年、彼女は受験生の母として
我が子を支える立場となっていた。
当時の受験生の応援歌が
時を経て次世代へと受け継がれていく。
🖊️
卒業式の最後を飾る『あなたへ』。
感染症予防のため
歌うことにさえ制限がある中で、
今の自分の心情と重ね合わせながら
その歌詞を噛みしめてほしいと願う。
🎵
愛と涙 そして知るだろう
人生という名の迷路の果てに
信じ合えることの喜びと
悲しみを知った分
優しくなれることを
10年後、20年後、そして30年後
再びこの歌と出会った時、
今年の卒業生は
どんな思いでこの歌を歌うのだろう。