砧中TOPICSメニュー

砧中TOPICS

校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.120

公開日
2020/05/05
更新日
2020/05/05

校長室より

No.120【"ONE TEAM”の行方】

ラグビー人気の影響で
つい数ヶ月前まで
"ONE TEAM”という言葉が
社会全体にあふれていた。

私自身、この言葉が嫌いではない。
ただ敢えて使わないようにしてきた。
日本代表にとってのその言葉を
私が自分の言葉として
使うだけの自信が無かったからだ。

"ONE TEAM”
みんなが一つのチームとなる、
それは決して簡単な事ではない。
立場や考え方の違いから
人は何度も衝突を繰り返す。
難しいのはその衝突の結果、
一つになれない事の方が多いのだ。
場合によってはその衝突が嫌で
目を逸(そ)らそうとしてしまう。

衝突に何度も傷つきながら
それでも逃げることなく
結果を出した人たちだからこそ
"ONE TEAM"を使えるのではないか。
私にはラグビー日本代表が
結果を出すまでの苦しみを知らない。
だからこそ自分の言葉として
使うことを避けてきた。

🏈

まだ学級担任となって間もない頃、
私の学級ではクラス目標として
「一致団結」を掲げていた。
教室前面には毛筆で書かれた文字。
行事では横断幕にも使っていた。

私も事あるごとに
生徒たちをこの目標で鼓舞(こぶ)した。
「一致団結、みんなの心は一つだ」と。

ある日の学活でのこと。
一人の男子生徒が突然手を挙げた。
その生徒は思いもよらない提案をした。

「クラス目標をやめませんか?」

ざわつくクラスメイトたち。

彼の主張は続く。
学級が一つにまとまっているようで
実はそうではないことが沢山ある。
陰口もある、嫌がらせもある。
みんなその事を知っていながら
一致団結している気になっている、と。

彼は最後に私に向けて言った。
「一致団結は簡単な事ではない」

私は学級担任として
「一致団結」という言葉の重みを
生徒から教わったように思っている。

🏫

今、社会が危機に直面している。
ネット上では攻撃的な言葉があふれ、
相手の立場を理解することもなく、
一方的な非難が繰り返される。
自分とは違う考えや行動に対して
寛容(かんよう)さが失われている。

それでも信じたいと願う。
多くの衝突を繰り返して
この危機を乗り越えた時に
私たちが本当に自分の言葉として
”ONE TEAM"を使える日が
必ず来ることを。