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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.138

公開日
2020/09/05
更新日
2020/09/05

校長室より

No.138【RBG】

現在アメリカで
若者たちから絶大な支持を受ける
87歳の女性がいる。
その人気はロックスター並み。
講演会はいつも満員。
彼女がステージに登場すると
似顔絵入りのTシャツを着た聴衆は
歓喜の声で迎えるのだ。

彼女の名は
ルース・ベイダー・ギンズバーグ
愛称は ”RBG” (アールビージー)。
9人いる米連邦最高裁判事の中で
最高齢の判事(裁判官)である。

彼女のドキュメンタリー映画を観た。

1959年、RBGは
コロンビア法科大学院を
首席で卒業する。
しかし彼女を雇用しようとする
弁護士事務所はゼロであった。
女性だから、という理由によって。
自由の国アメリカで、
そして法律の分野においてさえ
根深く残る性差別。
1970年代、彼女は性差別撤廃を訴え
100%勝ち目のない裁判に挑んでいく。

現代から見れば
RBGの主張は当然と思うことばかり。
男性が外で働き、女性が家事をする、
その固定観念が誤っているのだと訴える。
しかしその訴えは
当時のアメリカでは「過激」と見なされる。
男性の裁判官が彼女を諭すように言う。
「その性別役割が我が国の伝統なのだ」と。
彼女は反論する。
「伝統ではなく、負の遺産だ」と。

前列を踏襲しようとする人たちに対し
先例を示すべきと訴えるRBG。
そしてその主張が少しずつ受け入れられ、
次第に社会の方が変化していくのだ。

🏠

二度の癌(がん)を乗り越え
2020年の現在もまだ
最高裁判事の現役を務めている。
そして多数派の意見に対して
彼女は常に少数派としての
反対意見を唱え続けている。
若者たちがその反対意見を支持し、
いつしかそれが多数意見となっていく。

ある時、RBGがインタビューを受けた。

9人いる米連邦最高裁判事。
そのうち女性が何人になれば
あなたは満足するのか、と。
彼女は当然といった表情で答えた。

「9人です」


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「余録」を掲載しました。
併せてお読みいただければ幸いです。