校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.152
- 公開日
- 2020/12/05
- 更新日
- 2020/12/07
校長室より
No.152【敗者の歌】
〜 敗北 〜
敗れて北に逃げる・・・
私はこの言葉に
そんなイメージを抱いていた。
歴史を振り返ってみても。
源義経は東北へと落ち延び、
戊辰戦争の旧幕府軍も
北海道で最後の戦いをしている。
しかし改めて調べてみると
敗北の「北」は
方角を意味するものではなかった。
「北」という漢字の形は
人と人が背を向け合った姿を表す。
元は「背を向ける」という意味なのだ。
つまり「敗北」とは
戦いなどに敗れた後、
相手に背を向けて
逃げ去る意味となる。
そういう意味だとわかると
「敗北」を受け入れることを
屈辱と感じる人がいることにも
頷(うなず)ける気がする。
🧭
今年度、全国の中・高生が
部活動での最後の大会において
有終の美を飾る機会を奪われた。
競技を前提とした部活動では
その多くが「敗れる」ことで
最後の大会を終えることになる。
二年半近く地道に練習を続け、
積み重ねてきた努力も
「敗北」を受け入れることで
一つの区切りを迎える。
そこには常に「後悔」が伴う。
あの時なぜできなかったのか、
そういった思いを引きずりながら、
次の一歩を踏み出すのだ。
その「後悔」は大人になっても
心のどこかに引っ掛かったまま。
でもその「後悔」があるからこそ
今の自分になれたのだと
胸を張れる日が
きっと来ると信じたい。
そして今年度、多くの中・高生が
その「敗北」を受け入れる機会さえ
奪われたことを忘れてはならない。
📣
ここまで書いてきて
私は以前聞いた歌を思い出していた。
「敗者の歌」
その歌詞の一節。
🎵
さよなら青春の夢よ
僕にはとどかなかった
だけどだけど心の中には
優しい風か吹いた
🎵
その歌を久しぶりに聞きながら
なぜか私には
「敗北」の「北」の文字が
人が大きく手足を広げて
「敗」を受け止めているように
思えて仕方がなかった。