校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.178
- 公開日
- 2021/05/29
- 更新日
- 2021/05/29
校長室より
No.178【羅生門の鬼】
TVアニメ『まんが日本昔話』
ほのぼのとした昔話が多い中で
時折、怖い話も語られる。
私の個人的な怖い話の代表作は
『羅生門の鬼』という怪談話である。
千年以上も昔の話。
京の都(みやこ)の羅生門に
夜な夜な鬼が出没するという。
一人の武士がその鬼を退治するため
ある夜、羅生門へと向かう。
しかし門の陰から現れたのは
一人の娘だった・・・。
不気味な羅生門の雰囲気と
子ども向けとは思えない
その絵のおぞましさに
テレビを観ていた当時の私は
何度も目と耳を塞(ふさ)いでいた。
👹
「鬼」が現在のイメージとなったのは
江戸時代以降だと言われている。
『羅生門の鬼』の時代背景である
平安時代においては
「鬼」には具体的なイメージがなく
「得体のしれないもの」や
「不吉なもの」とされていた。
街灯など一切ないその時代、
夜になると都は闇(やみ)に包まれる。
都に住む人たちは
身の危険を冒してまで
夜に外出しようとはしない。
そんな深い闇の中でうごめくものは
いつしか得体のしれない存在となった。
しかしその「得体のしれない」存在は
人々が寝静まった夜にしか
出歩くことができない者たち、
つまりは当時差別を受けたり
住む場所のない人たちだった、
そういう見方が主流となってきた。
闇夜に外で動き回る「気配」への恐怖が
「鬼」と結び付けられるようになった。
「鬼」とされた者の多くは
社会的に弱い立場の人たちだったと
現在では考えられている。
🌒
『羅生門の鬼』
鬼は娘や老女に姿を変えて
武士を惑わそうとする。
果たして鬼が女性に化けたのか、
それとも虐(しいた)げられた女性が
鬼になるしかなかったのか、
それは誰にもわからない。