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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.186

公開日
2021/07/24
更新日
2021/07/24

校長室より

No.186【遠い日の宿題】

私は中学生の時に、
社会科の自由研究で
ある歴史上の人物を
調べたいと思っていた。

歴史的大事件「本能寺の変」
その事件を描くドラマの中で
以前から気になる場面があった。
攻め込まれる織田信長、
その信長を守る家来の中に
一人の黒人の侍がいたのだ。

その侍がいったい何者で
なぜ信長の家来になったのか。
謎に包まれたその人物を
調べてみたいと常々考えていた。

しかし、残念ながら当時は
町の図書館にも資料がなく、
私はその自由研究のテーマを
あきらめざるを得なかった。

🎐

その侍は日本名で
弥助(やすけ)と呼ばれる。

弥助が信長に出会ったのは
本能寺の変の1年3ヶ月前。
イタリア人宣教師のお供として
アフリカから日本へやって来た。
お供とはいえ実際は
奴隷の身分であったと言う。

180cmを超える身長と
「十人力」とされる怪力の持ち主。
その身体能力だけではなく
日本語も理解し、
武術や砲術にも長けていた。
能力を重視する信長にとっては
その身分や肌の色など関係なく、
彼は「弥助」と名付けられ
側近へと取り立てられる。


天正10(1582)年6月2日未明、
明智光秀が本能寺を急襲する。

火の手が上がる本能寺。
援軍を求めて
本能寺を抜け出した弥助。
光秀軍によって捕縛され、
南蛮寺へと移される。
その後の弥助の消息は
今なお不明のままである。
その本名とともに。

🔥

「ブラック・ライブズ・マター」

その運動の中で、
かつて奴隷の身分でありながら
信長に高く評価された弥助、
彼の人生が今、脚光を浴びている。

アニメの主人公になったり
ハリウッドでの映画化も進んでいる。
まさに弥助ブーム到来である。

遠い日の夏休み、
途中であきらめた自由研究。
40数年の時を経て
私は再びその人物を
調べてみたいと思っている。

学校の宿題としてではなく、
自分自身の宿題として。