校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.188
- 公開日
- 2021/08/07
- 更新日
- 2021/08/07
校長室より
No.188【老いたヒーロー】
グリム童話「おじいさんと孫」
おじいさんは高齢のため
うまく食事がとれません。
スープをこぼしてしまったり、
器を落として割ってしまったり。
そんなおじいさんの姿を
息子夫婦は疎(うと)ましく
思ってました。
そこで食卓には座らせず、
家族とは別に部屋の片隅で
食事をとらせることにしました。
器も割ることがないように
木製の器に変えました。
おじいさんは一人寂しく
食事をとるようになりました。
そんな様子を息子夫婦の子ども、
4歳の孫がじっと見ていました。
🥣
オリンピック開会式。
かつてのスーパーヒーローの
老いた姿を見ながら考えた。
介助されながら
自分の足で歩む姿に。
老いることは
恥ずかしいことなのか?
老いると人は動作も鈍くなり、
他人の手を借りなければ
身の回りのことさえできなくなる。
若い世代はそんな老いた人の姿を
疎ましく思ってしまう。
いつかの日か自分にも
必ず老いが訪れるからこそ
その姿から目を逸らせようとする。
社会学者の上野千鶴子氏は語る。
老いとは
抗(あらが)うことのできない
人が衰えていく過程であると。
そしてそれは誰一人
避けられない過程であると。
老いた人が老いた姿を見せる、
その事を通して誰もが老いを知り、
老いた人をどう支えればよいのかを
社会全体で真剣に考えるべきだと。
上野氏は訴える。
「老いて何が悪い!」
🛣️
グリム童話「おじいさんと孫」
その続きから。
ある日4歳の孫が
床に落ちている木片を
拾い集めていました。
父母である息子夫婦が
問いかけます。
「木片を集めてどうするの?」
4歳の孫はこう答えました。
僕が大人になった時、
この木片で器をつくり
お父さんとお母さんに
それで食事を与えるんだ。
息子夫婦はそれを聞いて
みんなと同じ器を用意して
おじいさんを食卓に招きました。