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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.200

公開日
2021/10/31
更新日
2021/10/31

校長室より

No.200【わたしたちの物語】

昨年の冬、
校内放送を通じて
合唱コンクール中止を
生徒たちに伝達した。

3月開催にわずかな希望を
繋いでいた生徒たちは、
その望みが絶たれた現実を
静かに受けとめていた。

🎙️

生徒たちの合唱を聴くと
私はいつも目頭が熱くなる。
生徒たちの歌声や歌う姿に
心が動かされるから。

いや、きっとそれだけではない。
まだ合唱とは言えない段階から
一歩ずつ坂道を昇るように
歌が練り上げられていく。
途中でその歩みが止まることも
時には後退することさえある。

軋轢(あつれき)や葛藤を繰り返し、
諦めそうになりながら
それでも今一度呼吸を整えて、
坂道の行き着く先を見上げる。

その行き着く先が
果たしてどこにあるのか
その時はまだ
見ることはできないけれど
気持ちを奮い立たせて
高みを目指していく。

仲間たちと共に。

その過程を通して
一人一人の心の中に
それぞれの学級の中に
一話ずつ物語が生まれる。

あの日あの時、
共に歌ったあの歌は
一人一人の物語の中で
かけがえのない位置を占める。

生徒たちの歌声を聴きながら
そこへ辿り着くまでの道のりと
その歌に寄り添った物語が
私の心に響きわたり
自然と涙があふれてくるのだろう。

🎼🎵

今年度、生徒たちは
希望のたすきを繋ぐため、
合唱としては
恵まれているとは言えない
環境下にあっても、
坂の上を目指して歩み続けた。

そしてその希望のたすきは
昨年度中止を伝えられた後、
砧中学校の伝統を
何としてでも繋ぎたいと
校庭で合唱を披露した
当時の3年生から受け継いだもの。

生徒たちによる
生徒たちのための
歌声のたすきリレー。

この物語は
わたしたちだけが知る
次世代へ向けての物語である。