砧中TOPICSメニュー

砧中TOPICS

校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.211

公開日
2022/01/08
更新日
2022/01/08

校長室より

No.211【雪合戦の思い出】

私の生まれ故郷は瀬戸内地方、
年間を通して温暖な気候で
めったに雪が積もることはない。

しかし私が小学生の時に
その地方では珍しく
大雪となったことがあった。

昼休みに雪の積もった校庭へ出て
さっそく雪合戦となった。
次第にテンションが上がり、
私は手加減することなく
近くにいたM君へ雪をぶつけた。

「痛いよ、止めてくれよ」
相手が嫌がれば嫌がるほど
面白さが増してくる。
倒れたM君めがけて
これでもかと雪玉を投げつけた。

次の瞬間である。
私の背中に強烈な冷感が走った。
何が起きたのかわからないまま
背中をまさぐる私。
その冷たさは痛みとなり、
私の両腕は宙を舞い続ける。

その時、私は事態を理解した。
誰かが私の首筋から背中に
雪玉を入れたのだ。

もがく私に周囲は爆笑となる。
さらに悲劇は続いた。
私のその姿を面白がり、
次から次へと他の級友たちが
私の服の間という間から
雪を入れ始めたのである。

冷たさと痛みと、
そして屈辱感で
私は泣きそうになった。
のたうち回る私に対して
群衆心理に突き動かされた
級友たちの攻撃は激化する。

校庭中に広がる
笑い声、笑い声、笑い声・・・

その時誰かの声がした。
「やり過ぎだよ」
その声に我に返ったのか、
級友たちの攻撃が突然止んだ。

汗と涙で潤んだ私の瞳は
私を助ける声を上げた
その誰かの姿を
やっとの思いでとらえていた。

そこにはM君が立っていた。



年末年始、
テレビのバラエティ番組では
様々なドッキリ企画が流される。

タレントを騙(だま)して
落とし穴へと落としたり、
熱湯へと突き落としたり。

騙されたタレントの
そのリアクションを見て、
スタジオのタレントたちが笑う。

そしてテレビの前の私も
つい笑い声を上げてしまう。

私のその笑い声と
あの雪の日の
校庭中の笑い声が
どこかで重なっていた。