砧中TOPICSメニュー

砧中TOPICS

校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.213

公開日
2022/01/22
更新日
2022/01/22

校長室より

No.213【20世紀のSF映画】

1994年に公開された
SFアクション映画を
テレビで久しぶりに観た。

当時は派手なアクションと
あり得ない未来の設定が
印象に残っただけであった。

しかし30年近くが経ち、
その未来が近づいている現在、
あり得ないと思っていた設定に
私はいつしか引き込まれていた。

🚓

物語は20世紀末に
冷凍保存された刑事と凶悪犯が
2032年の未来で復活し、
死闘を繰り広げるというもの。
わかりやすい勧善懲悪の展開。

今回改めて私の興味をひいたのは
20世紀の刑事が遭遇する
未来の習慣や技術の数々である。


あらゆるコンピュータ機器は
個人認証が無ければ
アクセスすることができない。
戸惑う20世紀の刑事。
IDコードやパスワードを忘れて
途方にくれる今の私と重なる。

未来では使用が制限された
表現や言葉を使ってしまうと
警告音が鳴り、罰金が課される。
20世紀に使われていた言葉、
そのいくつかの表現が
不適切と見なされているのだ。
このコラムを書きながら
果たしてこの表現を使っていいのか
警告音をいつも気にしている私。

大量の資源を消費した20世紀。
未来ではその反省から
トイレットペーパーが消えている。
一昨年コロナ下において
店頭からトイレットペーパーが
消えていった現実と重なった。

未来ではトイレットペーパーに代わり
トイレには貝殻が3枚置かれている。
その貝殻の使用方法は
最後まで明かされないが・・・

刑事はアナログ全盛だった
20世紀を懐かしむ。

🐚

映画の中で最も衝撃的だったのが
未来では人との接触を避けるため、
握手という習慣が
完全に消滅していることだった。
人々はエアータッチで
挨拶を行う習慣になっている。

映画を観た1994年当時は
奇妙に思えたこのエアータッチ。
しかし30年後の今では
何の違和感もなく
その行為を眺めている私がいた。

20世紀のSF映画はいつの間にか
今を描く映画となっていた。
そしてその映画を
久しぶりに観ている私は
映画の中の刑事と同じように
もう戻ることのないあの頃を
懐かしんでいるのだった。

画面やネットを通さずに
人と人とが直接関わっていた
アナログ全盛のあの頃を。