砧中TOPICSメニュー

砧中TOPICS

校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.214

公開日
2022/01/29
更新日
2022/01/29

校長室より

No.214【名優逝く】

大学には入ったものの
将来への希望も見出だせず、
無目的な日々を送っていた私。

そんなある日のこと、
ふらりと立ち寄った名画座で
私は初めて彼の映画と出会った。

『いつも心に太陽を』

荒れた高校に赴任した黒人教師、
その役がシドニー・ポワチエだった。


名優が世を去った。
享年94歳。

彼は人種差別がまだ根深かった
1960年代のハリウッドで
黒人俳優として初めて
アカデミー賞を受賞した。

アフリカ系としての誇りと
その孤高の演技により
今も多くの俳優から
慕われ、尊敬されている。

📽️

その映画『いつも心に太陽を』。

全く授業に興味を示さず
妨害を繰り返す生徒たち。
その生徒たちに向き合いながら、
悪戦苦闘する教師が描かれる。
今も定番の学園ドラマの原型は
この映画がモデルと言われている。

荒れる生徒たちにも
荒れる理由がある。
恵まれない家庭生活、
そして将来への希望も持てない。
大人を信じられない生徒たちに
大人の代表である教師が
指導を繰り返しても効果はない。

ポワチエ演じるサッカレー先生は
これまでの方法を転換する。
生徒たちを子どもとしてではなく、
一人の大人として尊重しながら
共に悩み、共に考えようとする。

教師は教えるだけの存在ではなく、
子どもたちからも学んでいく。
その関係性の中で
お互いが成長していくのだ。

荒(すさ)んで閉ざされていた
生徒たちの心の扉が
少しずつ開かれていく。

🎓

卒業パーティーの日、
生徒たちは感謝の歌と
みんなで選んだプレゼントを
サッカレー先生へ贈る。
はにかみながら
プレゼントを受け取る先生。

しかし映画はここで終わらない。
一人教室に戻った先生。
そこへ次の学年の生徒たちが
なだれ込んでくるのだ。
卒業生にも増して荒んだ態度。

ふざけながら教室を出ていく
その生徒たちを見つめながら
サッカレー先生は決意する。
また一からこの生徒たちと
向き合うことを。


映画を観終わり、
名画座を出た私。
無目的だった日常に
教員免許をとってみようかという
希望の光が一つともっていた。