校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.221
- 公開日
- 2022/03/19
- 更新日
- 2022/03/19
校長室より
No.221【いい学級とは?】
その学級は何をやっても
学年で一番をとり続けた。
運動会、合唱コンクール、
球技大会・・・。
教員の仕事も一通り覚え、
当時の私は心のどこかで
もう自分は一人前だと
思い込むようになっていた。
そんな時期に担任した学級である。
自分の学級が表彰を受けるたび
私は誇らしい気持ちになった。
自分の学級経営の力であると
自画自賛していたのである。
3学期の修了式の後、
私はその学級での最後の学活で
生徒たちを褒め称えた。
「この学級は最高だ!」と。
生徒たちが下校した教室で
4人の生徒が私を呼び止めた。
その生徒たちが訴えた話に
私は衝撃を受けた。
「この学級にはいじめがありました」
他の生徒たちと比べて
ワンテンポ遅れがちなMさん。
周囲の生徒数名から冷やかされ、
学級が一番となるために
運動会には出るなと言われていた。
実際、運動会と球技大会当日は
Mさんは体調不良で欠席していた。
砂の上に築かれた
「一番」という栄光。
全て理解しているという私の過信が
真の学級の姿を見えなくしていた。
帰り際4人の生徒たちは私に問いかけた。
「先生にとっていい学級とは何ですか?」
🏫
教員は誰でも学級を受け持つと
「いい学級」をつくろうと努力する。
しかし「いい学級」の考え方は
人によって様々である。
何でも一番の学級がいいのか、
それとも一人一人を尊重して
一人一人がこの学級で良かったと
思える学級を目指すのか。
たとえ「一番」はとれなくても。
昨日卒業した3年生。
この3年間生徒たちと
何度も「いい学級」とは何かについて
話し合ってきた。
「いい学級」とはこういう学級だと
私は生徒に教えようとは思わなかった。
大切なのは教員が考える「いい学級」と
生徒たちが考える「いい学級」との間に
ズレが生じてしまった時だと伝えた。
生徒と教員が「対話する」ことを通じて
「いい学級」とはどんな学級で
自分たちは何を目指していくのかを
共に考えていくことこそ
「いい学級」づくりではないだろうか。
そして3年生はその事を真剣に考え、
「いい学級」をつくることで
「いい学年」を築き、
「いい学校」に繋げていきたいと
私に約束してくれた。
昨日の卒業式は
その事を考え続けた3年生の
集大成だったように思っている。
🌸
雨に見舞われた昨日の卒業式。
今朝は一転快晴に恵まれた。
桜のつぼみも少しずつ
ふくらんできたように見える。
卒業生の去った校舎内を
私は一人歩いた。
遠いあの日、
私に問いかけた4人の生徒たち。
30数年の歳月をかけて
私はやっと答えの一つに
たどり着けたように思えた。