校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.10
- 公開日
- 2018/05/12
- 更新日
- 2018/05/12
校長室より
木曜日に行われた「学び舎あいさつデー」。
生徒たちが希望する小学校へ出向き、
児童に「おはようございます」と声をかける。
顔見知りの中学生を見つけ
嬉しそうに駆け寄る小学生。
中学生もちょっと先輩気分でつい笑顔になる。
挨拶の大切さは誰もが認めるところ。
♪ ♪ ♪
私には30年程前のある思い出がある。
当時、生徒会を担当していた私は、
挨拶週間の始まる月曜日に、
朝礼の場で全校生徒に挨拶励行を訴えた。
「外部から来た人は学校にとって大切なお客様です。
皆さんから積極的に挨拶をしてください。」
その数時間後のことである。
授業が終わり職員室に戻ろうとしていた私に
一人の女子生徒が問いかけてきた。
「建部先生、朝礼で挨拶しなさいって言いましたよね。
なのに何で建部先生は挨拶をしないんですか?」
虚を突かれた私は、咄嗟にその生徒に反論した。
「先生はいつもちゃんと挨拶をしているよ。」
生徒は不服そうな表情で更に問いかけてきた。
「じゃあ、何であの人に挨拶しないんですか?」
生徒の視線の先を追った。
そこには破損した水道管を修理する工事関係者がいた。
私はその工事関係者には気づいていたものの
そのまま素通りしていたのである。
「あの人も外部から来た人ですよね。」
私の頭の中に一瞬、言い訳が浮かんだ。
でも思いとどまった。
言い訳すれば、自分が苦しくなるだろうと思ったこともあるが、
その生徒の言うことがまさに的を得ていたからである。
私は引き返し、工事関係者の方に
「こんにちは。いつもありがとうございます。」と声をかけた。
その方は、驚いたように私を見て、
その後笑顔になった。
「そんな風に挨拶されると嬉しいですね。
ありがとうございます。」
逆に工事関係者の方からお礼を言われた。
こちらから挨拶して良かった、と思い、
私に問いかけた生徒の方を振り返った。
そこにはもう生徒の姿はなかった・・・