校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.12
- 公開日
- 2018/05/19
- 更新日
- 2018/05/19
校長室より
『白い恋人たち』という映画がある。
ラブストーリーではない。
1968年フランス・グルノーブルで開催された
冬季オリンピックの記録映画である。
ナレーションもない。
選手紹介もない。
淡々と、あくまでも淡々と開催準備から
華やかな宴の終わりまでの13日間を描いている。
音楽が素晴らしい。
フランシス・レイ作曲のBGMは
物悲しく、心にしみわたるように選手たちの活躍を彩る。
(※ きっと一度は聞いたことのある方が多いと思います。)
小学生の時に学校の映画鑑賞教室で
この映画を初めて観た時に、
あるシーンで体育館中から
どよめきの声が湧き上がった事を憶えている。
アルペンスキー、男子滑降。
スタートした選手をカメラが背後から追う。
猛スピードで丘を滑り降りる選手の後ろ姿。
「あっ!」誰かが叫んだ。
「影が・・・影が・・・」
私には最初何が起きたのかわからなかった。
体育館内のあちらこちらから
児童たちの驚嘆の声が上がり始めた。
事態を飲み込めずに焦る私。
と、次の瞬間、
私はスクリーンの中にあるものを見つけて
思わず「おぉっ!」と叫んでいた。
滑降する選手を追うカメラ。
雪の斜面にそのカメラマンの影が映っている。
ストックも持たず、重いカメラを両手で抱えたカメラマンの影。
カメラマンはその格好で
世界記録レベルのスキー選手と同じスピードで
後を追っているではないか!!
映画が終わり
教室に戻ってからも、
私たちの興奮は冷めることはなかった。
「あのカメラマン、凄い!!」
今もオリンピック・パラリンピックが始まると
あの衝撃的なシーンを思い出している。
ヒーロー、ヒロインは選手だけではないのかもしれない。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
映画の原題は『フランスにおける13日間』。
『白い恋人たち』と邦題をつけた当時の映画関係者のセンスに
改めて敬意を表したい。