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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.14

公開日
2018/05/27
更新日
2018/05/27

校長室より

若い頃、バックパッカーで各地を旅した。
東南アジアのタイを訪れた時のこと。
観光地でもない小さな町で、
地元の人が利用している渡し船に乗った。

船首部分に五色の布が巻き付けてあった。
綺麗なお花も。
何だろう、と思った私は布に触れてみた。

その時である。
船頭が大声を出して私の手を払った。
激怒している。慌てた私は船尾へと引き下がった。
他の乗船客も非難の眼差しを私に向けている。

後で知ったのだが、
タイでは船首には船霊が宿ると信じられている。
豊漁祈願や水難事故防止の願いを込めて。
その神聖な場所に外国人旅行者の私は
興味半分で踏み込もうとしたのである。

  ⭐   ⭐   ⭐   ⭐

その土地にはその土地のルールがある。

修学旅行で訪れた奈良と京都。
観光客向けに許容されていることが多いとはいえ、
神社仏閣では守るべきルールがある。

写真撮影が許されない場所。
大声で話してはいけない場所。

班行動中に注意を受けた生徒もいたと聞く。
その注意に対して不満を持つのではなく、
謙虚な気持ちで受け入れることが「学び」となる。

不慣れな土地では、
私たちは無知で無力である。
日常生活で通用していたルールが
全く通用しない場面に向き合うことになる。
「知ったかぶり」する必要はない。
「知らなかった」自分を知ることで、
新たな「知る」を会得していくのだ。

「知ったかぶり」を戒めた
『徒然草』の仁和寺のある法師の話※。
 
謙虚に、そして真摯に
教えを乞うことの大切さは
今も昔も変わらない。


仁和寺のある法師が岩清水八幡に参拝した。
山の麓にあった極楽寺と高良神社だけを拝んで、
山の上にあった肝心の岩清水八幡まで行かなかった。
法師はその事に気づいておらず、
岩清水八幡を参拝したことを周囲に自慢していた、という話。