校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.34
- 公開日
- 2018/09/16
- 更新日
- 2018/09/17
校長室より
セピア色の一枚の写真がある。
生き生きとボールを追いかる
袴(はかま)姿の女学生たち。
日付は大正9(1920)年11月
四国は香川県立丸亀高等女学校の校庭。
躍動感に溢れ、
心から競技を楽しんでいる様子が
時を超えて、現代の私たちにも伝わってくる。
しかし当時の備品記録をよく調べてみると
校内にあった8個のボール全てが
廃棄処分となっていた。
この写真が撮られた同じ年に・・・。
この事実に着想を得て
一つの演劇が誕生した。
『フートボールの時間』
今年の全国高等学校演劇大会において
全国の頂点に輝いた県立丸亀高等学校の演目である。
👘 👘 👘 👘
「良妻賢母」が理想の女性像とされていた大正時代。
その女学校では「フートボール」と呼ばれる
ボールを足で蹴る競技が盛んに行われていた。
彼女たちはボールを追いかけながら、
自分たちの夢を追い求めていた。
しかし、時代はそれを許さない。
親の決めた許嫁(いいなずけ)から
フートボールを禁じられ、
退学を余儀なくされる一人の女学生。
女性が足でボールを蹴ることを
「はしたない」と非難の声が教師や父母の間で広がっていく。
そして、突然、校内にあった全てのボールが処分される。
夢中になっていたものを奪われた女学生たち。
それでも彼女たちは
女性が自立する時代が
いつの日か必ず来るのだ、と信じようとする。
100年後の未来、女性によるフートボールは
日本に、いや世界中に広がっているだろうか?
それともこの世から消え去っているだろうか?
苦悩しながらも
未来へと夢を託す女学生たち。
「校庭に残された足跡には男も女もない。
大地は全てを受け入れてくれる。」
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現在、女子フートボール、
いや、女子サッカーの日本代表は「なでしこ」と呼ばれ、
今年の8月に行われたW杯では
当時の女学生たちと近い世代のU20が世界制覇を果たした。
そして、あの写真からちょうど100年後の2020年、
東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。