校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.36
- 公開日
- 2018/09/29
- 更新日
- 2018/09/30
校長室より
休日、久しぶりにファストフード店を訪れた。
カウンターで持ち帰りの品を注文。
カウンターの男性店員はアルバイトの学生なのか
何度もレジを打ち間違える。
少しイライラする私。
決して急いでいる訳ではないのに
わざとらしく腕時計に目をやってみる。
その行為に、さらに慌てて混乱する店員。
「急いでくれる?」
そう言おうとした私の頭の中を
遠い日の記憶が過(よぎ)った。
🍔 🍔 🍔 🍔
それは上京して間もない頃。
大学生の私は弁当屋でアルバイトを始めた。
その弁当屋は昼食時になると
店の前には長蛇の列ができていた。
その日はスタッフの数が少なかった事もあり
私は昼の時間帯に初めてレジを任された。
次から次へと出される注文。
弁当を手渡し、レジを打ち、
客の応対に追われる。
何とか順調に回り始めた
と思ったその時である。
数分前、会計を済ませたはずの一人の客が
血相を変えてカウンター前に戻ってきた。
そして私に向かって怒鳴ったのである。
「頼んだ弁当と違うじゃないか!何やってんだ!」
店の前にはまだ客が列をつくっている。
頭の中が真っ白になり、
私はその場に立ちつくした。
それに気づいた店長が
調理場からカウンターへとやって来た。
私を後ろへ下げ
先程の客に丁寧に謝罪すると同時に
注文通りの弁当を手配し、
続けて他の客の注文もさばいていった。
電光石火の早業。
その様子を眺めることしかできない自分。
1時間ほどして
昼時の喧騒(けんそう)が収まった頃、
店長は振り返って微笑み
私の肩をポンと叩いてこう言った。
「気にするな。最初はみんなそうだから。」
🍱 🍱 🍱 🍱
「急いでくれる?」
アルバイト風の店員に
そう言おうとしていた私は
思いとどまった。
そして気がつくと
こう語りかけていた。
「大丈夫ですよ」
店員のホッとした表情がそこにあった。
※ 2年生職場体験、お疲れ様でした。