校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.47
- 公開日
- 2018/12/15
- 更新日
- 2018/12/16
校長室より
歴史の授業で人気が高いのは
昔も今も「戦国時代」と「幕末」である。
ところが明治維新以降になると
途端に生徒の関心が薄れてしまう。
「版籍奉還」や「廃藩置県」などの政策的な話が多くなり、
難しいと感じるからだろう。
30年前、私は社会科の教師として
この時代に生徒たちの関心をいかに惹(ひ)きつけるか
試行錯誤(しこうさくご)を繰り返していた。
悩みに悩んだ末、TVドラマをビデオテープに録画した。
大久保利通が襲撃されるラストシーン、
彼の最期のセリフを消音にし、
テレビ画面の前で生徒にアフレコをさせた。
西郷隆盛の敵役としてドラマでは描かれる事の多い大久保。
しかし、日本の近代国家化には彼の存在は不可欠である。
生徒たちからはオリジナルのセリフが次々と飛び出した。
「西郷さん、俺も今から行くからな」ドラマチックに叫ぶ生徒。
「私にはまだまだやらなければならないことがある」
「わしを恨(うら)むなら恨め、誰かがやらねばならぬのだ」などは
大久保の実績を踏まえて、彼の立場から出た言葉。
📼 📼 📼 📼
公開授業で行ったこの実践。
自信を持って臨んだにもかかわらず
授業後の協議会では参加者から厳しい指摘が相次いだ。
「歴史には事実は一つ、
歴史上の人物の言葉を勝手に創作させるのはいかがなものか」
これが大半の意見であった。
それでも協議会後、他校から参加した1年目の社会科教師から
「行き詰まっていた授業にヒントを頂きました」と言われた時は
正直、うれしかった。
🎩 🎩 🎩 🎩
明治維新から150年。
今年のNHK大河ドラマは『西郷(せご)どん』。
明日いよいよ最終回を迎える。
明治31年12月18日
死後21年目にして
西郷隆盛の銅像が上野公園に建立される。
その除幕式(じょまくしき)に招待された西郷の妻イト、
彼女が西郷の銅像を見るなり、ぽつりとつぶやいた。
「こげん人(ひと)じゃ なかよ」
果たしてその言葉が何を意味していたのか、
今となっては誰にもわからない。