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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.58

公開日
2019/02/23
更新日
2019/02/23

校長室より

2019年2月 スーパームーン。

幻想的な月を眺めながら
今からちょうど50年前の1969年、
アポロ11号が月面着陸したことを想った。

小学生だった当時の私。
自宅の白黒テレビでその中継(録画?)を観た記憶がある。
近所の大人たちは、にわか天文マニアとなり、
購入したばかりの天体望遠鏡を自慢し合っていた。
新聞やテレビでは「夢」や「希望」という言葉があふれ、
幼い私の心にも新しい時代の幕開けを予感させた。

そう、アポロ11号が月へ行ったっていう
ずっとずっと前にはもう、
私は生まれていたのである。


  🚀    🚀    🚀    🚀


アポロ11号のニール・アームストロング船長。
その伝記が映画化された。

『ファースト・マン』(2018年)。

リアリティーを追求したこの映画を観ていると
50年前、私をワクワクさせた
「夢」や「希望」といった美しい言葉が
次第に色褪(いろあ)せていくのを覚えた。

1960年代の終わりまでに
人間を月へと到達させると宣言したアメリカ大統領。
その公約を実現させるために
「無謀」とも言える計画が進められていく。

繰り返される失敗。
そしてその犠牲となっていく多くの宇宙飛行士たち。

いよいよ月へ向けて出発する直前に
アームストロング船長自身、現実から逃避しようとする。
そこには英雄は存在しない。
家族を愛し、愛するがゆえに
恐怖から逃げようとする一人の弱い人間がいる。

映画のために再現されたアポロ11号。
当時、科学技術の最先端と言われたその宇宙船は
現在の私の目には
あまりにも弱々しく写った。


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2019年。
月を眺めながら、
ふと手に持ったスマホに目が行った。

現代のスマホの方が
アポロ11号よりも科学技術力では
はるかに上だと言う。

今から見れば「無謀」とも思えるその計画に
多くの人たちが命をかけて携わった。
そしてその延長線上に
探査機「はやぶさ2」の「リュウグウ」着陸成功がある。

50年前に偉業を成し遂げ
歴史にその名を刻んだ人たち、
そしてまた、計画に携わりながらも
歴史に名を残すことがなかった全ての人たちに
私は静かに頭(こうべ)を垂れた。