校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.84
- 公開日
- 2019/08/24
- 更新日
- 2019/08/24
校長室より
「体育館に蜂(はち)が出ました!」
私は殺虫スプレーを持って走る。
雑木林に接する砧中学校では
毎夏繰り返される光景。
「近づかないで!」
生徒たちに声をかける。
そして蜂が壁に止まるタイミングを待って
殺虫スプレーを噴霧(ふんむ)する。
🐝 🐝 🐝 🐝
今、子どもたちに大人気のキャラクター
俳優 香川照之が扮(ふん)する『カマキリ先生』。
幼い頃からの昆虫好き。
その趣味を生かして
NHK ETVの『香川照之の昆虫すごいぜ!』で
メインキャスターをつとめている。
昆虫を愛する熱量は半端ではない。
昆虫のどこに魅(ひ)かれるのか?
「本能のままにまっすぐ生きる昆虫の姿、
最高にいいんです」
そして番組の中で何度も繰り返す。
「人間よ、昆虫から学べ!」
そんな『カマキリ先生』。
先日は遂にETVから飛び出し
なんと総合の『NHKスペシャル』
『香川照之の昆虫 "やばいぜ!"』に登場した。
昆虫王国と言われる中米コスタリカでの取材。
コスタリカの昆虫がまたすごい!
モルフォチョウ
プラチナコガネ
エレファスゾウカブト・・・
その色彩、その大きさ、その生態
すべてに驚きの連続であった。
しかし最も驚いたのが
世界中で昆虫の数が急激に減少しているという事実。
この30年間で毎年2.5%減少しているという。
このままのペースだと100年後には
昆虫の数は現在の1%未満になってしまう。
この状況を専門家は『昆虫カタストロフィ』と呼ぶ。
昆虫が花粉を運ぶことで育つ植物、
その植物が減少する。
それを食料にしていた草食動物に影響が及ぶ。
次に草食動物を食料としていた肉食動物にも。
そう、食物連鎖が破綻(はたん)するのだ。
昆虫の好き嫌いに関わらず
私たちはこの地球で共存共栄している。
急速な都市化や農薬の大量投入、
そして地球温暖化が確実に昆虫に影響し始めている。
一方でオオカバマダラという蝶は
温暖化に適応するため、
羽を少しずつ巨大化させているという。
自分に合った気候の土地まで
遠い距離を飛べるようにと。
昆虫はやはりすごい!
やばいのは人間なのかもしれない。
🦋 🦋 🦋 🦋
砧中体育館に話は戻る。
殺虫スプレーで退治した蜂を
ビニール袋に入れる。
生徒たちの安全のためには仕方ない。
体育館裏手の雑木林へと向かう。
私は蜂をビニール袋から出し、
土へと還(かえ)した。