校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.102
- 公開日
- 2019/12/27
- 更新日
- 2019/12/29
校長室より
『マッチ売りの少女』
今から160年以上前に書かれた
デンマークの作家アンデルセンの童話。
❄️
大みそかの雪の夜、
街ゆく人たちにマッチを売る少女。
少女は靴を無くし裸足のまま
売れないマッチを売り続ける。
寒さのあまり、一本のマッチをする。
ささやかな温もりの中、
彼女の前には暖炉が現れる。
マッチの火が消えると
暖炉も消えてしまう。
再びマッチをする。
現れたのは豪華な料理。
そしてやはりマッチの火とともに消える。
さらにマッチをする。
今度はクリスマスツリー、
そしてまた消えていく。
少女はもう一度マッチをする。
彼女の前に現れたのは
優しかったおばあさん。
今はもうこの世にいないおばあさん。
おばあさんにずっと側にいてほしくて
一本、また一本とマッチを灯す。
おばあさんは優しく少女を抱き上げ、
二人は空高く登って行った。
新年の朝、街の人たちは
静かに息を引きとった少女を発見する。
おばあさんと一緒に旅立った
少女の顔には微笑みが浮かんでいた。
❄️
童話が出版された当時、
救いのない結末に
読者から批判が寄せられたという。
実際にアメリカでは
少女が裕福な家庭に引き取られて
幸せな結末となる物語も出版されている。
しかし、アンデルセンは
決して結末を変えようとはしなかった。
少女は不幸せだったのだろうか?
それとも幸せだったのだろうか?
児童文学者の松岡享子(きょうこ)さん(84歳)。
松岡さんは子どもたちの空想する力を尊重する。
サンタでも、妖精でも、プリンセスでも
想像し、憧れ、夢に見てほしいと話す。
空想する力、夢を見る力こそが
悲しい現実に打ちひしがれず
希望へとつながっていくと。
📚
『マッチ売りの少女』
少女はマッチに火を灯しながら
自分の夢を信じようとした。
そして信じることができたからこそ
微笑みを浮かべていたのかもしれない。
なぜ、アンデルセンは結末を変えなかったのか?
小学生の時にこの童話に出会った私。
半世紀近く経った今もまだ
年の瀬が近づくとこの物語を思い出す。
今年のクリスマスイブ。
内戦が続く中東シリアで戦闘が激化し、
子どもを含む多くの犠牲者が出ていると
新聞が報じていた。
今も世界中に『マッチ売りの少女』がいる。