校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.133
- 公開日
- 2020/08/01
- 更新日
- 2020/08/01
校長室より
No.133【ダンゴムシの底力】
I組理科の授業で
ダンゴムシを観察していた。
質問、ダンゴムシは昆虫か?
正解は、昆虫ではなく甲殻類。
エビやカニの仲間なのだ。
なるほど言われてみると
脚の数は6本ではなく14本。
「ムシ」という言葉に惑わされて
なんとなく昆虫のように思っていた。
ボーッと生きてきた
自分を恥じてしまった。
🔬
その授業から数日後、
偶然にもあるTV番組で
ダンゴムシの生態を取り上げていた。
ダンゴムシが障害物にぶつかると
当然のように右か左に曲がる。
そして障害物が途切れた所まで来ると
最初右に曲がった時は左に、
左に曲がった時には右に曲がる習性がある。
ダンゴムシには脳がない。
体のバランスをとるための反応なのだ。
そこで実験のために
左右に曲がり続ける迷路の中に
ダンゴムシを入れてみる。
つまり永遠に左右の動きを
繰り返させようというのだ。
ダンゴムシにとっては無限の苦しみ。
しかし、左右に曲がり続けて30分程たつと
ダンゴムシが思わぬ行動に出た。
無限の迷路から脱出するために
突然、壁をよじ登り始めたのだ。
壁をよじ登る行動は
空からの天敵に狙われる危険がある。
それでもダンゴムシは
無限の迷路から抜け出すため
反応だけでは説明できない
予想外の行動をとったのだ。
繰り返すがダンゴムシには脳が無い。
ではこのよじ登る行動を
どう説明すればいいのか?
生物は未知の状況に置かれた場合、
隠れた活動部位が目覚めるという。
人間も昔から
火事場の馬鹿力と言われるように
潜在能力が発揮される時がある。
ダンゴムシのこの行為は
無限の迷路から逃れるため、
あえて危険を冒してまで
通常では考えられない行動に
打って出たように思えてくる。
私たち人間もまた
人生の大きな壁にぶつかる時がある。
その壁は大きく高く
つい挫折してしまいそうになる。
それでも自らの限界を乗り越えようと
私たちは壁に挑んでいくのだ。
🧱
左右に曲がり続けていた
実験中のダンゴムシ。
一瞬考えるように動きを止め、
そして壁を登り始めたその姿に
私はなぜか自分を重ね合わせていた。
※[参考]
7月15日(水)放送
NHK Eテレ
『又吉直樹のヘウレーカ!』
〜 ダンゴムシに心はあるか? 〜