校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.146
- 公開日
- 2020/10/31
- 更新日
- 2020/11/01
校長室より
No.146【おいしい給食】
その題名に誘われ、
TVドラマ『おいしい給食』を観た。
1980年代。
ある中学校で、
給食マニアの教師と生徒が
静かな闘いを続けていた・・・
それは、どちらが給食を
よりおいしく食べるか、という闘い。
給食が楽しみで教師となった主人公。
給食をいかに美味しく食べるかが
彼の生きがいでもある。
給食マニアの主人公の前に
最大のライバルが現れる。
それは自分の担任する学級の生徒。
その生徒は教師の想定外の食べ方で
給食の美味しさを日々追求している。
ある日のメニューは
鯨(くじら)のオーロラソースかけ、
そしてソフト麺にけんちん汁。
教師はソフト麺を、
けんちん汁につけて食する。
つけ麺風の食べ方なのである。
次に鯨肉にかかったオーロラソースを
千切りキャベツに絡めて味わった。
まさに王道の食べ方で
給食を堪能(たんのう)した。
しかし、である。
ライバルの生徒は
思いも寄らない食べ方を披露する。
ソフト麺をキューブ状に切り分け、
なんとオーロラソースに絡ませたのだ。
さらにはけんちん汁の野菜を
キューブ状のソフト麺にのせ、
カナッペ風に麺を味わい始めた。
教師はこの予想外の食べ方を前にして
これまでにない敗北感を味わった。
教師としてこのまま
負けに甘んじる訳にはいかない。
ライバル同士の闘いは
次の日も、また次の日も
続いていくはずだった・・・。
🎽
ドラマと同じ1980年代。
私がまだ駆け出しの教師だった頃。
私の担任する学級に
一人の転校生がやって来た。
彼はなかなか学級に馴染めず
給食の時間も班の中で
周囲と会話することもなく、
黙々と食べていたのだ。
ある日の給食の時間のこと。
その日のメニューは "揚げパン"。
数個残った揚げパンのおかわりを
希望者が前に出てきて
ジャンケンで争うこととなった。
私が驚いたのは
前に出てきた希望者の中に
転校生の彼がいたのだ。
そして彼はジャンケンに勝ち、
ついに揚げパンを手にした!
さらに驚くべき事が起こった。
揚げパンを勝ち取った彼に向け
クラスの生徒たちが拍手をしたのだ。
揚げパンを持って自席に戻る途中
彼ははにかみながらも
転校以来初めての笑顔を見せた。
この日を境にして
彼はクラスの一員となったのである。
給食の時間にも
様々なドラマがある。