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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.155

公開日
2020/12/26
更新日
2021/01/03

校長室より

No.155【知らないを知る】

12月の初旬
新聞の片隅に掲載された
ある記事に私は衝撃を受けた。

アフリカ・ナイジェリアで
男子の中等学校寄宿舎が
武装集団の襲撃を受け、
300人を超える生徒たちが
連れ去られたという内容。

生徒たちの安否を思うと
悲しみと怒りに苛(さいな)まれた。
一方で心に引っ掛かったのは
新聞記事の扱いであった。
国際面の片隅、
あまり目立たない箇所。
もし日本やアメリカ、
ヨーロッパ諸国での事件であれば
もっと大々的に報じられただろう。

📰

日本で報道される
国際ニュースの多くが
アメリカやヨーロッパ諸国、
そして日本に近い東アジアに
偏っているのでは? と感じていた。

中東と呼ばれる西アジアや
アフリカに関するニュースは
紛争や貧困に焦点があてられ、
その"悲惨"さが強調される。

ステイホーム期間中、
私はネット配信を利用して
普段は観る機会のほとんどない
西アジアやアフリカの映画を
何作品か視聴した。

特にパレスチナやシリアは
今も紛争状態に置かれている。
常に暴力と隣り合わせの中、
それでもその土地土地で
わが国と同じ日常があり、
日々の暮らしがある。

ドキュメンタリー映像の中には
子どもたちの笑顔がある。
廃墟の中にあっても
遊びに興じる子どもたちの姿は
遠い世界の住人ではない。
私の隣近所の子どもたちと
何ら変わらないのだ。

報じられる紛争死傷者の数。
ただの「数」として
終わらせたくはない。
一人ひとりに名前があり、
愛する人たちがいるはずなのだ。

🎄

冒頭のナイジェリアのニュース。
その後、344人の生徒たちが
無事に解放されたとの続報があった。
ホッと胸をなでおろす私。

しかし、これをきっかけとして
ナイジェリアの現状を調べ始めた私は
新たな事実に衝撃を受けることになる。

生徒たちを連れ去った
武装集団のメンバー自体もまた
かつて同じように
連れ去られた子どもたちだったのだ。