校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.156
- 公開日
- 2020/12/31
- 更新日
- 2020/12/31
校長室より
No.156【"第九"を聴く】
🎵ジャジャジャジャーン
ベートーベン作曲
交響曲第5番『運命』
繰り返される同じリズム。
一説によると、このリズム音は
ベートーベンが生涯にわたって
悩まされ続けた難聴が原因の
耳鳴りの音だとも言われている。
🎼
ベートーベン生誕250年。
(1770年生・1827年没)
20歳代で発症した難聴は
その後さらに悪化を続け、
40代の頃には
会話すらできなくなっていた。
筆談で意思疎通を図りながら、
それでも名曲の数々を
世に送り出したのである。
年末恒例の交響曲第9番、
いわゆる"第九"は、
50歳を過ぎてからの作曲である。
交響曲に合唱を取り入れたのは
ベートーベンが初めてであった。
第4楽章の有名な合唱では
高音のパートが延々と続く。
人間の声の限界まで要求される
高音の連続なのだ。
難聴のベートーベンには
高音を聴くことはできなかった。
もし聴くことができていたなら
そこまでの要求をしただろうか。
聴くことができなかったからこそ
自らがイメージした理想の高音を
限界まで追求したと言われている。
交響曲第9番のテーマは
人間の階級差やその差別に対する
自由・平等への希求である。
しかしその自由や平等は
人間の不断の努力によってしか
獲得することはできない。
そういった人間のあくなき挑戦を
音楽で表現しようとしたのが
この交響曲第9番と言われている。
だからこそ、第4楽章の合唱は
人類の理想を達成した
喜びや感動を表現しており、
『歓喜の歌』と呼ばれている。
🎻
演奏が1時間以上にも及ぶ"第九"。
この第4楽章の「歓喜」に至るまで
延々と続く長い道のりがある。
長く苦しいコロナ禍の今年。
そして世界各地で
偏見や差別の嵐が吹き荒れた今年。
その長い道のりの先に
必ずや「歓喜」が訪れることを願い
私は大晦日に在宅で
"第九"を堪能したいと思っている。
それでは皆様、
良いお年をお迎えください。