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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.157

公開日
2021/01/02
更新日
2021/01/02

校長室より

No.157【新春に想う】

上の雪
さむかろな
つめたい月がさしていて

下の雪
重かろな
何百人ものせていて

中の雪
さみしかろな
空も地面(じべた)もみえないで
(金子みすゞ「つもった雪」)

金子みすゞの詩を初めて知ったのは
私が20代後半の頃。
まだ若手教員でありながらも、
教員としての仕事をある程度経験し、
私はもう自分が一人前だと
思い込みはじめた時期だった。

そんな頃、
私の学級の副担任を務めていた
先輩教員から紹介されたのが
金子みすゞの詩だった。

「見えていないものを見るように」

先輩は詩を紹介しながら
そう私を戒(いまし)めた。

金子みすゞの詩は
1980年代になって
再評価されるようになる。
当時世の中はバブル景気と呼ばれ、
社会全体が浮かれていた。
そんな時代だからこそ
金子みすゞの詩は
人々の心に響いたのだ。

まだ未熟であるにもかかわらず
全てがわかった気になっていた、
そんな私の心情と当時のバブル時代が
どこかで繋がっていたような気がする。

その後、先輩の予想は的中する。
それまで表に出ていなかった
学級内の様々な問題が明らかとなる。
見えているつもりでいたものが
何も見えていなかったことに
私は気づかされることになったのだ。

その後バブルは弾(はじ)けて
社会も迷走し始めることになる。

❄️

2021年新春
東京は穏やかな晴天に恵まれた。

しかし、北日本や日本海側では
寒波による豪雪となっている。
そして、社会全体では
見えないウイルスによる不安が
今も広がり続けている。

「見えていないものを見るように」

年頭にあたり
私はあの日の先輩の言葉を
改めて心に刻んでいた。

🌃

青いお空のそこふかく
海の小石のそのように
夜がくるまでしずんでる
昼のお星はめにみえぬ
  見えぬけれどもあるんだよ
  見えぬものでもあるんだよ

ちってすがれたたんぽぽの
かわらのすきにだァまって
春のくるまでかくれてる
つよいその根はめにみえぬ
  見えぬけれどもあるんだよ
  見えぬものでもあるんだよ
(金子みすゞ「星とたんぽぽ」)