校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.167
- 公開日
- 2021/03/14
- 更新日
- 2021/03/14
校長室より
No.167【見放題のワナ】
定額料金さえ支払えば
好きな映画や番組が見放題、
好きな料理も食べ放題できる。
震災報道の後に
食べ放題のお店情報が流れても
何の違和感も覚えない日常。
私自身も映画の定額見放題に登録し、
休日は映画鑑賞を楽しんでいる。
しかし最近ふと気づいたことがある。
映画がつまらないと感じた時、
途中から早送りをしたり、
視聴を打ち切るようになった。
映画館で料金を支払い
鑑賞していた映画は
最初はつまらないと感じても
最後までじっくりと観ていたのに。
🎬
自宅で視聴した
ドキュメンタリー映画
『ハニーランド 永遠の谷』。
バルカン半島の小国、
北マケドニア共和国。
その国の人里離れたへき地に
一人の女性が住んでいる。
電気も水道も通っていない。
生活の糧(かて)は、
蜂の巣から蜂蜜を取ること。
「半分は自分、半分は蜂」
蜂蜜を採取する時も
蜂のために半分は残すのだ。
そのことが蜂の絶滅を防ぎ、
持続可能な生活となっている。
ある日彼女の家の隣に
大家族が移り住んできた。
その家族も蜂蜜採取を始める。
しかし巣を半分残すことはしない。
金儲(もう)けのために、
全てを取り尽くすのだ。
まさに「取り放題」なのである。
行き場を失った蜂は
主人公の女性の家の巣を襲う。
そしてほとんどの蜂が
死滅してしまうのだ。
蜂蜜が取れなくなると
家族はさっさと引っ越して行く。
女性がもう一度ゼロから
蜂を育て始めるところで
映画は静かに終わる。
🐝
その映画は派手な演出もなく
淡々と日々の生活を描いていく。
正直に告白すると
私は最初早送りをしながら
その映画を視聴していたのだ。
映画内容の予備知識もなく
とりあえずチェックしておこう、
そんな軽い気持ちからの視聴だった。
しかし途中で早送りを止めて
もう一度最初から
じっくり鑑賞しようと思い直した。
それは蜂蜜「取り放題」の家族の姿が
映画「見放題」の私自身に
重なったからかもしれない。