校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.177
- 公開日
- 2021/05/22
- 更新日
- 2021/05/22
校長室より
No.177【美容室の外では】
美容室の中には
女性ばかり13人の客と店員。
妊婦もいれば、
家族問題に悩む客もいる。
結婚を間近に控えた客も。
どこにでもある日常風景。
しかし、時折テレビの画像が乱れ、
電力不足で停電が起きる。
そして美容室のドアの外では
銃を携帯した男たちが行き交い、
つながれたライオンの姿がある。
美容室の外の世界には
非日常の光景が広がっている。
その美容室があるのは
パレスチナ自治区ガザである。
🇵🇸
パレスチナ映画
『ガザの美容室』(2015年)
1940年代から続く
パレスチナとイスラエルの争い。
連日ニュースや新聞では
ガザの惨状が報じられる。
しかし多くの日本人にとっては
遠い国の出来事であり、
複雑な国際問題に理解が及ばない。
映画の中では
私たちと変わらない日常がある。
しかし、一歩外に出れば
生命の危険と隣り合わせなのだ。
恐怖に怯(おび)えながらも
たくましく日々を生きる女性たち。
外で銃声や爆発音が聞こえても
ヘアスタイルやメイクには
こだわっていたいのだ。
「外はいいから髪を切って」
「お願い、メイクを続けて」
しかし日常の美容室の中に
少しずつ非日常である外の世界が
忍び寄ってくる。
映画のラスト近く
一人の客がポツリとつぶやく。
もし私が大統領なら
ここにいる女性だけで
素晴らしい政府をつくるのに。
✂️
今朝の報道によると
11日間に及んだ
ガザでの戦闘が一時停戦となった。
しかし子ども65人を含む
232人が犠牲となっている。